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今月のキーワード

境界層 / シュリーレン画像 / ボルンエネルギー / 球面三角法 / 確率利得

●境界層[boundary layer]
流体は粘性をもっている。水や空気の一様な流れのなかに物体を置くと,流体は物体の表面に粘りつく。つまり物体表面で流速はゼロである。物体から離れるに従い,流れは一様流と同じ速度になる。このような物体表面から一様流速になるまでの流速が急に変化する薄い層を境界層という。境界層内の流れには,層流と乱流があり,乱流境界層では層流に比べて流れが乱れており,その結果として熱伝達率が非常に大きく,極超音速流れでは機体に及ぼす影響が大きい。(p.4「極超音速飛行への飽くなき探求」)

●シュリーレン画像[schlieren image]
シュリーレン画像は,気体や液体などの透明な媒質における微小な密度変化を,特殊な光学系を利用して光の屈折により目にみえるかたち(しま模様やもや状の影など)で表した画像のことである。媒質中を伝播する衝撃波の前後では,密度の急激な上昇が急しゅんな屈折率勾配を生じさせ,それによって透過光が偏向することにより,白と黒のコントラストの強い線となって現れる。シュリーレンはドイツ語のSchliere(むら)に由来する。(p.4「極超音速飛行への飽くなき探求」)

●ボルンエネルギー[Born energy]
イオンの溶媒和自由エネルギー(solvation energy)は,ボルンの式ΔG=−NZ2e2/8πε0r(1−1/εr)で表される。ここで,N:アボガドロ数,Z:イオンの価数,e:電気素量,ε0:真空の誘電率,r:イオンの有効半径,εr:溶媒の比誘電率である。この式は溶媒が水の場合には水和エネルギーに対する定性的な説明を与えるが,εrとして純粋な水の比誘電率を用いると定量的な一致が不十分である。すなわち,イオンに水和した分子は,強い静電場に置かれているため,その誘電率は純粋な水の誘電率とは著しく異なる小さい値となり,水和エネルギーは減少する。本文では水和殻におけるボルンエネルギーの減少による正電荷との結合力向上,すなわち水和殻の強度向上が紹介されている。(p.22「関節軟骨のたくみな潤滑」)

●球面三角法[spherical trigonometry]
球面上の図形の形状や大きさの関係を扱う幾何学。球面上の2点を球面に沿って結ぶ最短線(測地線)は大円(球の中心を通る平面と球面との交線)の一部となるので,これを直線として扱う。その長さは球の中心からみた角で表し,2本の測地線がなす角は交点での接平面上で考える。地球はほぼ球体なので,その表面上での距離と方角を考えるさいに有効である。天文学でも天球上での見かけの距離を扱うさいに球面三角法を用いることがある。(p.52「素晴らしい球面三角法」)

●確率利得[probability gain]
地震予知における異常現象の有用性を示す指標であり,確率ゲインや予測ゲインともいわれる。ある異常現象について,アラームを出す範囲と決めた「所定の規模(マグニチュード)・場所・時間内に地震の起こる確率」が,その現象が起こったことで,ふだんに比べて何倍高くなるかを意味する。「異常現象が起こってから所定範囲内に地震が起こった(的中した)回数」を,「異常現象が起こった回数」で割ると的中率が得られる。的中率を,「所定の範囲内に地震がふだん起こる確率」で割ると確率利得になる。したがって,ある異常現象を用いたアラームの的中率が高くても,対象の地震が頻繁に起こるのであれば確率利得は高くならず,有用性は低いといえる。一方,稀な大地震に対して,複数の独立した異常現象が生じれば,1よりかなり大きくなり得る。(p.56「避難しなくて済む社会へ:地震予知のパラダイムシフト」)

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