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今月のキーワード

コートタンパク質 / 鏡像異性体 / ファインマンの影響汎関数 / センターピボット灌漑 / ハインドキャストシミュレーション

●コートタンパク質[coat protein]
ウイルスの遺伝物質はキャプシドとよばれる殻で覆われている。コートタンパク質はキャプシドを構成しているタンパク質であり,遺伝物質を包み込んでいることからこの名前が使用されている。コートタンパク質の分子量はおよそ14000で,180分子が自己集合して正二十面体構造の殻をつくる。(p.27「重水素化不要の固体NMRによるタンパク質構造の解明」)

●鏡像異性体[mirror-image isomer, enantiomer]
分子がそれ自身の鏡像と構造的に重ね合わせられない場合,その分子と鏡像分子とは互いに鏡像異性体(エナンチオマー)であるという。鏡像異性体は,偏光に対する光学応答(旋光性,円二色性)の符号が互いに逆で,いわゆる光学活性を示すので光学異性体ともいわれる。大多数のアミノ酸では炭素原子に結合する4つの基がすべて異なり,いわゆる左手型・右手型の鏡像異性体が存在し,円二色性(左右円偏光の吸収差)の符号が逆である。(p.38「生命および宇宙における鏡像対称性の破れ」)

●ファインマンの影響汎関数[Feynman’s influence functional]
ファインマンの経路積分による量子力学において,粒子の時間発展は古典的作用を含む汎関数によって重みづけされた任意の経路の重ね合わせ(汎関数積分)として表現される。環境と相互作用する系の密度演算子を経路積分で考えたとき,環境の効果を与えるのが影響汎関数であり,量子力学に基づいて開放系を扱うための強力な道具の1つとして知られている。停留位相近似によって対応する古典系の非自明な発展方程式を導くこともできる。(p.41「『電子摩擦』が生み出す分子の非平衡ダイナミクス」)

●センターピボット灌漑[center-pivot irrigation]
乾燥地における灌漑方法の1つで,農地の中心で地下水をくみ上げ,それを巨大な回転するパイプを使って同心円状にまわりの耕地に散布する。その半径は数百mから1 kmに及ぶこともあり,米国や中東での実施例が多く,飛行機や人工衛星からも沙漠の中にある緑色の模様としてみえるほどである。広い面積に灌漑できるため効率がよい反面,過度のくみ上げによる地下水資源の枯渇や塩害などの問題を起こす場合もある。(p.46「気候変動における陸域の複雑な役割」)

●ハインドキャストシミュレーション[hindcast simulation]
過去にすでに起こった現象について,モデルによるシミュレーションを行い,観測値と比較して再現性を確認すること。現在から出発して未来をシミュレートする予報(フォアキャスト)と区別してこうよばれる。過去の現象は正解が観測からわかっているので,モデルをテストするうえで有効である。たとえば過去の台風について,ある時点の状態から出発した予測を行い,観測されたような進路や風速をモデルでシミュレートできるか,など。(p.46「気候変動における陸域の複雑な役割」)

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