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今月のキーワード

磁気モノポール / ベイズ主義 / ステライルニュートリノ / 抵抗力理論 / クライオ電子顕微鏡 / メゾスコピック系 / X線光電子分光法 / 誘導結合プラズマ質量分析法

●磁気モノポール[magnetic monopole]
N極またはS極だけからなる磁石の性質をもつ未知の粒子。理論上は存在していると考えられているが実験ではこれまで見つかっていない。もしこれが発見されれば素粒子論や宇宙論に大きなインパクトがあるとされている。(p.4「磁気モノポールの探索」)

●ベイズ主義[Bayesianism]
科学哲学におけるベイズ主義とは,確率論におけるベイズの定理に基づいて,仮説の帰納的な確証の過程をとらえようとする立場をさす。この文脈ではベイズの定理は,背景知識,経験的証拠,当の仮説の事前確率,そして対立仮説のリストが与えられたうえで,当の仮説の事後確率―これがその仮説の確証の度合いを表す―を計算する規則を与えるものとみなされる。確率の解釈としては主観的解釈が採用される。不確実な証拠や古い証拠をどう扱うか,事前確率をどう推定すべきかなどの問題がある。(p.14「物理学者が歴史を学ぶ意義」)

●ステライルニュートリノ[sterile neutrino]
素粒子の標準理論では,3種類(フレーバー)のニュートリノとそれぞれに対応する反ニュートリノが存在する。これらは弱い相互作用を介してのみほかの素粒子と相互作用する。この標準的なニュートリノ描像は多数の実験結果の積み重ねを経て,確固たるものとなっている。一方でこの枠組みに入らないニュートリノの存在を完全に否定することはできない。弱い相互作用すら感知せず,質量を通じてのみ相互作用する粒子の存在は理論的には可能であり,ニュートリノ実験の結果とも矛盾しない。そのため,記事にあるように実験データの小さな綻びを,このような仮想的なニュートリノを導入することで説明する考え方が生まれてきた。この仮説で仮定するニュートリノをステライルニュートリノとよんでいる。(p.24「ステライルニュートリノ:アイスキューブなどの実験では見つからず」)

●抵抗力理論[resistive force theory]
媒質中の物体に働く抵抗力は,物体の微小要素に働く抵抗力の和として表せる,とする近似理論。とくに,べん毛や繊毛といった細長い器官で流体中を泳ぐ細胞や微生物に対して用いられる。物体の形状が細長く,その変形が小さい場合に適用可能である。そうでない場合には,微小要素が流体を介した相互作用が無視できないため,おのおのの抵抗が部分ごとには定まらず,単純な和では表すことができなくなる。(p.28「なぜかうまくいく粉体抵抗力理論のなぞ」)

●クライオ電子顕微鏡[cryo-electron microscopy]
クライオ電子顕微鏡とは,急速に凍結させた試料をみるための電子顕微鏡である。これによって,これまでは不可能であった生物試料を生きたままに近い状態で観察することができるようになった。電子顕微鏡の自動化,検出感度および画像解析技術の向上によって,数Å(1 Åは10−10 m)の分解能でタンパク質などの生体分子を観察できる。薬とタンパク質の相互作用を原子レベルで可視化でき,生物医学や創薬研究のさらなる発展が期待されている。(p.31「創薬研究に応用できる超高分解能タンパク質画像」)

●メゾスコピック系[mesoscopic system]
メゾスコピック系とは,肉眼でわれわれがみたり触ったりすることのできるマクロスコピックなサイズ領域(バルク領域)と,孤立した原子や分子などのミクロスコピックなサイズ領域との中間のサイズの系を意味し,具体的には数ナノメートルからサブミクロンの長さの領域の物質をさす。このメゾスコピック系では,量子力学的効果が現れる場合があり,バルク領域とは異なった物性を示すことが観測されている。その性質を工学的に利用しようとするのが,ナノテクノロジーである。(p.44「凝縮系核反応の現状と今後の発展」)

●X線光電子分光法[X-ray photoelectron spectroscopy, XPS]
X線光電子分光法は表面元素分析手法の1つで,分析したい試料表面にX線を照射し,生じる光電子のエネルギーを測定することで,サンプルの構成元素とその電子状態を分析することが可能である。試料表面数ナノメートル程度の元素を同定することが可能で,水素やヘリウム以外のほぼすべての元素の種類,およびその電子状態がわかる。また,アルゴンエッチングを行いながら,XPS計測をくり返すことで深さ方向の元素分布を知ることができる。(p.44「凝縮系核反応の現状と今後の発展」)

●誘導結合プラズマ質量分析法[inductively coupled plasma mass spectrometry, ICP-MS]
誘導結合プラズマ質量分析法は,試料をアルゴンの誘導結合プラズマ(inductively coupled plasma)中に導入することでイオン化させ,それを質量分析計で検出することで元素を同定する高感度な分析手法である。ほとんどすべての元素を同時に測定可能であり,測定元素についてサブng/L(ppt)の濃度レベルで測定できる。また,解析に注意が必要であるが,質量分析であるため同位体比測定が可能である。(p.44「凝縮系核反応の現状と今後の発展」)

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