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今月のキーワード

フラストレーション / ミランコビッチサイクル / 量子相転移

●フラストレーション[frustration]
フラストレーションとは,系を構成するさまざまな要素に関する最適化の条件がお互いに競合し,それらを同時に満たすことができないような状況をさす。いわば「あちらを立てれば,こちらが立たず」という状況である。物質内部においても,フラストレーションは,磁性体,金属,超伝導体,強相関系,誘電体などのさまざまな系で発現し,その物性に重要な役割を果たす。フラストレート系では物質内部に大きく特異なゆらぎが発生し,その結果,通常とは異なった新奇な秩序や熱力学相が実現したり,特異な非平衡ダイナミックスや巨大応答が出現したりする。伝統的にはフラストレーション研究は局在磁性分野に端を発するが,近年では,磁性分野にとどまらずより広汎な分野へと,急速な展開をみせている。(p.4「フラストレーションをデザインする」)

●ミランコビッチサイクル[Milankovitch cycle]
地球の公転軌道は楕円形で,楕円のつぶれ方(離心率)は約10万年の周期で変動する。地球の自転軸は公転軌道面に対して22°〜24.5°で変動し,その周期は約4万年である。地球の自転軸は公転軌道面を歳差運動し,近日点の季節変動は約2万年の周期をもつ。以上,3つの地球の公転軌道要素の変動によって,地球に入る緯度方向の日射量の季節分布が周期的に変動する。これに起因して寒冷期と温暖期が周期的にくり返される気候変動を,この説を提唱した研究者の名前をとってミランコビッチサイクルとよぶ。(p.28「鍾乳石から読み解く古気候」)

●量子相転移[quantum phase transition]
相転移は熱力学的な「相」の移り変わりを意味し,そこでの熱力学的特異性がくわしく調べられてきた。しかし,系のマクロな特徴の入れ替わりは,絶対零度においても,系を記述するパラメーターの変化によって起こる。そのような変化は古典的にも起こるが,物理量の非可換性が重要な役割をする状態(「相」)のあいだで起こる場合,とくに量子相転移とよばれる。本号で説明した横磁場イジング模型やハルデーン-ダイマー(Haldane-Dimer)相転移などが典型例である。また,ドーピングの強さによって基底状態が超伝導状態から反強磁性状態に変わる点なども量子相転移として扱われている。(p.46「講座:相転移ことはじめ 第12回(最終回) 多様な相転移V:量子相転移」)

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