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今月のキーワード

ガンマ線バースト / ポストニュートン法 / ヘリウムイオン顕微鏡 / 地球反ニュートリノ / リソグラフィー技術(トップダウン手法) / クーロンダイヤモンド特性 / 運動学的ダイナモ理論 / エディントン光度

●ガンマ線バースト[gamma-ray burst, GRB]
太陽が一生をかけて放出するのに匹敵するエネルギーをわずか数秒の間におもにガンマ線として放射する,宇宙最大の爆発現象。ブラックホールとそれを囲む降着円盤が駆動する相対論的速度のジェットによるものと推測されている。継続時間の長いものは大質量星の最期の質量崩壊に伴って,継続時間の短いものは中性子星を含むコンパクト天体連星の合体に伴って起こると考えられており,それぞれ重力波とほぼ同時に観測されることが期待されている。(p.20「連星ブラックホールの合体」)

●ポストニュートン法[post-Newtonian method]
一般相対論の弱重力場における近似法の一種であり,平坦な時空からのずれが小さいとして方程式を1/c,あるいは系の典型的な速度vを用いてv/cの多項式として展開する手法。とくにコンパクト連星合体の場合,連星が十分離れていて軌道運動が光速より十分に遅い早期インスパイラル段階では,連星の運動およびそこからの重力波放射を精度よく計算することが可能であり,テンプレート波形の計算にも用いられている。(p.20「連星ブラックホールの合体」)

●ヘリウムイオン顕微鏡[helium ion mircroscope]
イオン顕微鏡の一種であり,高電圧で加速されたヘリウムイオンビームを物質に照射したさいに生じる2次電子や反射イオンなどを検出し,物質の形状を観察する顕微鏡。原理は走査型電子顕微鏡とほぼ同等であるが,ヘリウムイオンビームは物質波の波長が電子線の波長よりも短く電子線よりも強く収束できることから,より高い解像度で観察できる。またヘリウムイオン照射量を制御することにより被照射試料のエッチング,物性制御が可能である。(p.32「結晶欠陥によるグラフェンの絶縁体化と電気伝導のゲート電圧制御」)

●地球反ニュートリノ[geologically-produced anti-neutrino(geo-neutrino)]
ニュートリノの呼称は素粒子的な性質の分類以外に発生場所で分類されることがある。地球反ニュートリノは,地球内部の放射性崩壊で放出される反ニュートリノ(反物質の仲間)である。崩壊系列を含む放射性崩壊におけるニュートリノスペクトルと崩壊熱の関係はよく理解されており,反応しにくいニュートリノは地球内部からでも容易に飛び出すため,地球反ニュートリノは地球内部での放射性熱生成を理解する最適なツールである。(p.38「地球物理の難題に挑戦するニュートリノ観測」)

●リソグラフィー技術(トップダウン手法)[lithography technology]
リソグラフィーは,感光性樹脂を塗布した半導体ウェハー上に光や電子線を照射し,微細な素子パターンを半導体ウェハー上に転写する,LSI微細化の鍵を握る技術である。大きな装置を用いて微細な加工を行うため,トップダウン手法とよばれる。現在,光リソグラフィーは波長193 nmのArFエキシマレーザーを用いて30 nm程度の素子を加工でき,電子線リソグラフィーはスループットは低いが,十数nm程度の大きさの素子を加工できる。(p.42「ボトムアップ手法で作成する単電子トランジスター」)

●クーロンダイヤモンド特性[Coulomb diamond characteristics]
単電子トランジスターに,ドレイン電圧とゲート電圧を加えたさいの電気伝導特性において,ゲート電圧方向にくり返し観察される菱形の電圧領域のこと。菱形の電圧領域のためクーロンダイヤモンドとよばれる。それぞれの菱形は,単電子島の電子数が1個ずつ異なることに対応しており,菱形の電圧領域の中では,クーロンブロッケード現象により電子は単電子島で安定化しているため,電流が流れない。菱形のくり返し構造より,ゲート電圧挿引により電流が周期的に流れるクーロンオシレーションが観察される。(p.42「ボトムアップ手法で作成する単電子トランジスター」)

●運動学的ダイナモ理論[kinematic dynamo theory]
天体の磁場は小さな種磁場が流体の複雑な運動で増幅されてできたと考えられている。この過程はダイナモとよばれ電磁流体力学で記述されるが,磁場の増幅には差動回転とともに非軸対称の運動が必要であることがわかっている。多くのモデルや数値的な研究が行われているが,そのうち磁場の流体の運動への反作用を無視した理論を運動学的ダイナモ理論という。代表的な理論として,非軸対称運動として渦度場と速度場とが相関をもつような乱流場を考えるαΩ理論がある。(p.50「高エネルギー天体物理学」)

●エディントン光度[Eddington luminosity]
輻射が物質に与える力が重力と等しくなる光度をエディントン光度という。エディントン光度は天体の光度の上限値となる。ほとんどの場合,輻射には電子散乱が主要な寄与をなしており,電子1個あたりに働く力はL/4πr2σT/cとなる。ここでσTはトムソン散乱の断面積である。陽子1個に働く重力はGMmp/r2なので,エディントン光度は4πcGMmp/σTとなって中心天体質量に比例する。太陽質量に対してはおよそ1038 erg s-1である。(p.50「高エネルギー天体物理学」)
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