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今月のキーワード

血液脳関門 / 海馬 / 短期記憶と長期記憶 / 重力マイクロレンズ / デューティー比 / ラウス関数

●血液脳関門[blood-brain barrier]
血液やリンパ液中に含まれる脳にとっての有害物質が脳内に侵入することを妨げている関門。脳の毛細血管壁にグリア細胞が覆い,細胞間隙がほとんどなくなる物理的な障壁となり,脂溶性が高く分子量の小さい物質のみを透過するフィルターとして働く。脳にとって必要な物質は内皮細胞のトランスポーターにより選択的に輸送される。(p.24「脳はどこまでわかってきたか:神経可塑性に着目して」)

●海馬[hippocampus]
ほ乳類の大脳辺縁系の一部で,感覚情報などさまざまな情報が入力され,それらを処理している。記憶や空間の学習にかかわっており,海馬の除去以後,新しい長期記憶ができなくなったという症例を発端に研究が進んだ。学習によって得た記憶はいったん短期記憶として海馬に保存される。海馬では記憶の取捨選択が行われ長期記憶に移行するものは海馬ではなく大脳皮質に貯蔵される。記憶障害の病気であるアルツハイマー病では,初期の病変が海馬に見られる。(p.24「脳はどこまでわかってきたか:神経可塑性に着目して」)

●短期記憶と長期記憶[short-term memory and long-term memory]
保持期間によって分類された記憶の種類。動物種によって異なるがほ乳類の場合,数分から数時間程度まで保持される短期記憶と数日以上から死ぬまで保持される長期記憶に大別される。短期記憶は関連タンパクのリン酸化によるシナプスの伝達効率の一時的な変化などによって起こる。一方,長期記憶にはタンパク質の合成をともない,シナプスの伝達効率の電気的変化だけでなく,ニューロンの樹状突起の伸長やシナプス数の増減,神経微小回路の新生など,構造変化として痕跡が見られる。(p.24「脳はどこまでわかってきたか:神経可塑性に着目して」)

●重力マイクロレンズ[gravitational microlensing]
この現象は,アインシュタインの一般相対性理論が予言する「光が重力によって曲がる」という性質のために生じる。ある星の前を偶然別の星が横切ると,その星の重力によって背後の星からの光は曲げられて,レンズのような働きをして集光し,突然明るくなったように見える。ふつうの星がレンズとなると20日程度の間に,単調に明るくなって,また同じ早さで元の明るさに戻っていく。しかし,もしこの星のまわりに惑星があると,その惑星の重力の影響で単調でない増光が余分に加わり,そこに惑星があることがわかる。(p.37「マイクロレンズで探る銀河系内の惑星の数」)

●デューティー比[duty ratio]
周期的な出力を行うさいの出力時間と1周期の時間の比率のこと。たとえば,パルス幅が10μs,周期が10 msの場合,デューティー比は1/1000となる。デューティー比が小さいほど定常的に出力し続ける場合と比較して出力電力が抑制される。パルスモーターなどの回転数制御のさいのパラメーターとしてもよく用いられる。(p.42「角度依存シュタルクサイクロトロン共鳴とその応用」)

●ラウス関数[Routh function]
ラウシャン(Routhian)ともいう。ハミルトニアンに現れない座標(循環座標)がある場合には,その座標に限定したルジャンドル変換をハミルニアンに行うととり扱いが便利になる。このようにして得られるものをラグランジアンと区別してラウス関数R(ラウシアン,Routhian)という。こうすると,循環座標(qi, pi)に対しては,ハミルトン形式の運動方程式qi=∂R/∂pipi=−∂R/∂qiが得られ,非循環座標(qj, pj)に対しては,ラグランジュ形式の運動方程式d(∂R/∂qj)/dt−∂R/∂qj=0が得られる。中心力のケプラー問題などを極座標(r, θ)を用いて解くときなどには,このラウス関数の方法は大変便利である。このように,ハミルトン形式とラグランジュ形式とを併用する(分離する)ところにラウス関数の方法の特徴がある。(p.52「変分原理と物理学」)
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