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今月のキーワード
反強4極子秩序/ ヘテロダイン検出/量子カスケードレーザー/ アロステリー/低障壁水素結合/ 野生型/変異体

●反強4極子秩序[antiferroquadrupolar odering]
希土類化合物の4 f 電子は,2z2 − x2 −y2,x2 − y2,xy,yz,zx の5 種類に分類される異方的な電荷分布をもち,4 極子モーメントとなって電子系および格子系に影響を及ぼす。たとえば,点電荷−2qを原点に,+ q の電荷を(o,o,±a)に配置する2z2− x2− y2 の電荷分布は,O20=(2 Jz2− Jx2− Jy2)/√3 の4 極子モーメントに対応する。Jx,Jy,Jz は全角運動量である。O20 がオーダーパラメーターになると,その電荷分布はz 軸方向に伸びているので,z 軸に伸び,x とy 軸方向に縮む歪みと結合する。その結果,立方晶は正方晶に構造相転移することになる。これを強4 極子秩序という。−2q の点電荷を原点に,+ q の電荷を(o,o,±a)に配置する電荷分布と,+2q の点電荷を原点に,−q の電荷を(o,o,±a)に配置する電荷分布がくり返して,結晶全体として整列化した場合が反強4 極子秩序である。有限温度なら物質によらず4極子モーメントは存在するが,磁気モーメントによる磁気秩序のほうが顕著なため,その存在があらわでないことが多い。磁気秩序が起きない4 f 電子系で,強または反強の4 極子秩序が発現することがある。(p.19「重い電子系の超伝導」

●ヘテロダイン検出[heterodyne detection]
ヘテロダインとは,信号処理などで2 つの異なる周波数の信号を混合することで,差周波数に対応する周波数を生成することをいう。ヘテロダイン検出では検出したい信号(周波数fs)と局部発振器とよばれる別の発振器で発生した信号( 周波数をf LO)を混合することで,周波数fIF = | fs − f LO| の中間信号を生成し,これを検出する。中間信号の周波数は局部発振器の周波数だけ低くすることができる。また,中間信号のパワーは局部発振器のパワーに比例して増幅される。このため高い周波数の信号の高感度検出法として利用されている。(p.44「室温動作の光源が生み出す大出力テラヘルツビーム」)

●量子カスケードレーザー[quantum cascade laser]
量子井戸のサブバンド間遷移を利用した半導体レーザーの一種。1 つの量子井戸構造では利得が小さいので,半導体量子井戸構造を何層も積層し,各層の上位順位から下位順位への遷移で電子を何度も発光させ,利得を稼いでいる。その電子の流れが“ 階段状に連続した滝”(cascade,カスケード)に似ているので量子カスケードレーザーとよばれる。量子井戸構造をうまく設計することにより,近赤外から遠赤外( テラヘルツ帯)までの発振が可能である。テラヘルツ帯における発振では,電子の熱的励起を抑制するために素子を冷却する必要がある。(p.44「室温動作の光源が生み出す大出力テラヘルツビーム」)

●アロステリー[allostery]
低分子などのリガンド結合によって,タンパク質分子内のある部位に生じた構造変化が,分子内の別の部位の構造変化を誘起し,その結果機能の制御をする性質をさす。(p.52「タンパク質ダイナミクスの実時間観測」

●低障壁水素結合[low-barrier hydrogen bond]
通常の水素結合では,水素イオンはどちらか一方のヘテロ原子に属している。しかし,ヘテロ原子間の距離が短くなると,水素イオンは両方の原子間を低い活性化エネルギーで移動できるようになる。これを低障壁水素結合とよぶ。(p.52「タンパク質ダイナミクスの実時間観測」

●野生型/変異体[wild type / mutant]
野生型とは自然集団中でもっとも高頻度で発生する型の系統,生物,遺伝子をさす。本稿では,その遺伝子によって発現したタンパク質に対して用いている。一方,DNAあるいはRNA上の塩基配列に物理的変化が生じることを遺伝子突然変異とよび,その結果生じた野生型とは異なるものを突然変異体とよぶ。本稿では,変異体という語を,遺伝子の塩基配列を変化させることによってつくられた,アミノ酸残基が置換されたタンパク質という意味で用いている。(p.52「タンパク質ダイナミクスの実時間観測」



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