index 2011index 9月号目次 9月号目次

今月のキーワード
セントラルドグマ/ オペロン説/ セレックス法/ハイブリダイゼーション/ アゴニスト/光共振器/ 中性子星の最大質量/シャピロ遅延効果
●セントラルドグマ[central dogma]
遺伝情報の流れは,転写と翻訳の順にDNA→RNA→タンパク質というものであり,遺伝情報の維持はDNA→DNAの複製でなされるという分子生物学の原理。RNAウィルスなどの例外や,RNA→RNA複製とRNA→DNAの逆転写はあるが,特別なケースに対応したこの基本ルートの修飾とされている。クリック(Francis Crick)により1958 年に提唱された。(p.6「ナノ構造物としてのDNA」)

●オペロン説[operon theory]
発現が協調して調節される複数の遺伝子のこと。遺伝子上のオペレーター(operator)部位に,制御因子(regulator)が結合して発現を促進したり抑制したりする。普通,転写においていわれることが多いが,翻訳についても成立する概念である。制御因子も,タンパク質が想定されることが多いが,リボスイッチやRNA干渉では,小分子やRNAが制御因子となる。1961年ヤコブ(Francis Jacob)とモノー( Jacques Monod)によって提唱された分子生物学の原理。(p.6「ナノ構造物としてのDNA」)


●セレックス法[systematic evolution of ligands by exponential enrichment, SELEX]
ランダム配列の部分をもつ核酸分子の集合から,親和性カラムなどを用いて親和性の高い核酸分子を選択し,PCR反応により分子数を増やす。このサイクルを何回か回すと,親和性の強い順番の分子数をもつ核酸分子集団が得られる。この方法で, あるタンパク質が結合するDNA配列を明らかにすることや,ある物質に高親和性をもつタンパク質の遺伝子を得ることができる。1990 年にゴールド(Larr y Gold)とショスタク( JackSzostak)との2 つの研究室で開発された。(p.6「ナノ構造物としてのDNA」


●ハイブリダイゼーション[hybridization]
塩基配列が相補関係にあるDNA鎖が2本向き合う形で, もしくはDNA 鎖とRNA鎖がそれぞれ向き合う形で,相補的なそれぞれの塩基どうしで,水素結合によって安定な2 本鎖構造を形成すること。(p.12「光で操るDNA」)

●アゴニスト[agonist]
アゴニスト(作動薬)は,生体内のある反応経路を促進する作用をもつ物質である。反対に,ある反応経路を遮断するものをアンタゴニスト(antagonist, 拮抗薬)という。とくに生命科学分野では,それぞれ受容体作動薬,受容体拮抗薬をさすことが多い。じんましんやアレルギー性鼻炎は,ヒスタミンが細胞表面のヒスタミン受容体に結合することで起こる。このような症状に対する治療薬,いわゆる抗ヒスタミン薬は,ヒスタミンと受容体の結合を阻害することでその症状を緩和するアンタゴニストの1 種である。(p.22「DNAはタンパク質を超えるか?」

●光共振器[optical cavity]
2 枚の鏡を合わせ鏡のように対向させて置くと,光はその間を何回も往復できる。つまり光子を鏡の間に閉じ込めたことになる。これがもっとも簡単な光共振器であり,波長の半整数倍が2 枚の鏡の間隔と等しい,すなわち“ 共振する”光が閉じ込められる( 縦モード)。共振条件は,光電場の横方向の位相分布までを考慮に入れた高い次数に拡張できる。この高次の共振条件は横モードとよばれる( 位相分布が均一なのが縦モード)。光を安定して共振器内に閉じ込めるには,共振条件とは別に,共振器の安定条件を満たす必要がある。(p.32「光子のボース‐ アインシュタイン凝縮」

●中性子星の最大質量[maximum mass of neutron stars]
エネルギーを失い温度の効果が無視できる(温度を0 Kとみなせる),回転していない球形の星に関しては,重力と圧力勾配とがつり合う平衡形状を中心密度の系列として計算できる。一般に中心密度を大きくすると星の質量は増えるが,中心密度とともに星の質量が減ることもあり,ここに質量の極大値ができる。その極大値は2 つの中心密度の値で現れる。最初に現れる極大の質量が白色矮星の最大質量で,2 番目が中性子星の最大質量である。(p.35「中性子星質量の最高記録」)

●シャピロ遅延効果[Shapiro time delay effect]
一般相対性理論によると,物質やエネルギーがあると時空間が歪む。この理論を太陽系内で検証できる実験として1964年にシャピロ( Irwin I. Shapiro)によって提案されたのがシャピロ遅延効果である。実際に,レーダーを使って電波を太陽の近くに向けて発射し,反対側にいる金星に反射させて戻ってきた信号が地球に到着するのにかかる時間が太陽の重力場の効果でどの程度延びるかを測り,一般相対性理論が予言する量と一致することが確かめられた。(p.35「中性子星質量の最高記録」


index 2011index 9月号目次 9月号目次