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今月のキーワード
エアロゾルの間接効果/ 超対称パートナー/コンパクト化/ モジュライ/ ドメイン/カルマン渦列/ 表面張力/ 電気2 重層/プラトーボーダー
●エアロゾルの間接効果[aerosol indirect effect]
エアロゾルとは,大気中に浮遊する微小粒子のことで,火山灰や砂塵など自然起源のものと,化石燃料の燃焼などによる人為起源のものとがある。エアロゾルの気候影響には,太陽や地球からの放射を吸収・散乱して放射収支に影響を与える直接効果と,それが雲核となり,雲量の変化を介して日射量の減少に影響する間接効果とがある。放射強制力として,直接効果が− 0.9 〜− 0.1 W/m2,間接効果が− 1.8 〜− 0.3 W/m2 と見積もられており,温室効果気体による温暖化を相殺する方向に働いている。しかし,これらの過程は十分に理解されておらず,見積もり値の不確実性も高い。(p.4「A列車で行こう,地球大気の旅に」

●超対称パートナー[superpartner]
超対称性は,既知の素粒子ごとにスピンが1/2 異なり,ほかの量子数は同じ数をもつ粒子が存在することを予言する。それらは超対称パートナー( 超対称粒子)とよばれている。ゲージ粒子の超対称パートナーは,スピン1/2 をもちゲージーノとよばれる。本文中ではとくに,Wボソンの超対称パートナーであるウィーノが重要な働きをすることが述べられている。また,クォークやレプトンの超対称パートナーはスピンゼロのスカラー粒子であり,それぞれスクォーク,レプトンとよばれ,重力子の超対称パートナーはグラビティーノとよばれている。(p.22「弦理論と現実世界」)

●コンパクト化[compactification]
超弦理論は,10 次元時空上で矛盾なく定式化することができる。一方で,私たちが日常経験しているのは4 次元時空なので,残りの6 次元空間は,観測されないくらい小さな空間になっていなければならない。このように10 次元時空を広がった4 次元時空に加え,6 次元分は小さくコンパクトな空間を考えることを時空のコンパクト化とよぶ。超弦理論をどのようなコンパクト空間上で定式化するかということで,導出される4 次元の素粒子現象論的な性質は異なる。(p.22「弦理論と現実世界」)

●モジュライ[moduli]
コンパクト空間上の超弦理論は,一般にモジュライとよばれる場を含んでいる。その真空期待値は,コンパクト空間の大きさや形などの幾何学的構造を決定する。さらに,4 次元の素粒子物理学に現れるさまざまな結合定数( ゲージ結合定数,湯川結合定数)の値を決定する。このようにモジュライ場は,超弦理論に特徴的なモードであり,素粒子物理学においても重要な働きをする。そしてその真空期待値の決定機構が重要であり,その機構を通してモジュライ場は質量を得ることになる。(p.22「弦理論と現実世界」

●ドメイン[domain]
分域とも訳される。相転移温度以下になると,強磁性体では磁化,強誘電体では分極,強弾性体ではひずみが自発的にそろう。結晶全体にわたって,自発磁化(や自発分極や自発ひずみ)がすべて一定の方向を向いている場合には「単分域になった」という。一方,ある大きさをもつ多数の領域が結晶内にできて,1 つの領域内部では自発磁化等がそろっているものの,領域ごとの自発磁化等の向きがそれぞれ異なる場合には「多分域になった」という。このような領域のことをドメインまたは分域といい,多分域構造において,各分域を隔てる境界をドメイン壁または分域壁という。多分域構造を磁場などの共役場のなかにおくことにより,各分域内の自発磁化等を一方向にそろえることができる。すなわち,比較的強い共役場でドメイン壁を動かすことによって,多分域構造を単分域構造に変えることができる。(p.30「マルチフェロイックの歴史と展望」

●カルマン渦列[Km vortex]
カルマン渦ともよばれ,一様な流れの中に置かれた円柱状の物体の後方に生ずる。条件がよければ,互いに反対向きの渦が2 列となって交互に並ぶ。最初に解析したのが流体力学者のフォン・カルマンであった( 1911 年)。物体後流の速度を熱線風速計などで測定すると,信号のスペクトルはある振動数f で鋭いピークを示す。それを流速Uと円柱直径dによって無次元数にしたのがストローハル数Sである。S の値はレイノルズ数Re に依存するが,典型的な値は,Re =Ud/ν.103(νは動粘性率)で,S= f d/U. 0.21となる。例として,直径2 mmの針金が秒速10 mの風に当たると,振動数f は約1050 Hz で,これは可聴音となる。実際,ストローハル(Vincenc Strouhal)は音の振動数を測定して法則を得た( 1878年)。これは針金が横振動することの間接的な証拠である。(p.48「渦と高層ビル」)

●表面張力[surface tension]
物質の構成分子は互いに引き合っており,その引力は分子の種類や密度によって異なる。そのため,異種物質の境界では不均衡な関係が生じる。この関係はマクロ的に,水などの液体の表面を小さくしようとする力( 表面張力)として作用する。気泡の場合,それを取り囲む表面の縮小は,気泡内部の圧力の増加につながる。また,小さな気泡ほど,表面の曲率が大きく,圧力の増加も著しい( ラプラスの法則(Laplace ’s law))。なお,水に界面活性剤を加えると表面張力は低下する。(p.52「シャンプーとビールの泡立ちの違い」)

●電気2重層[electrical double layer]
電離した界面活性剤は水の表面を帯電させる。一方,界面活性剤から分離したイオンは静電気力により表面近傍に引き寄せられる。その結果,正と負の電荷がそれぞれ局在化した領域が表面の周囲に形成される。これが電気2 重層である。ところで,帯電した微粒子は電場中を移動するため,その速度からゼータ電位(zetapotential;移動時の滑り面の電位)が求まり,表面の帯電の状態を知ることができる。近年では,界面活性剤がない条件下でも気泡が帯電していることが知られている。(p.52「シャンプーとビールの泡立ちの違い」)

●プラトーボーダー[Plateau’s border]
泡沫における2 つの気泡の境界は面であるが,3 つの気泡の境界は線となる。これがプラトーボーダーである。直角に断面を取るとプラトーボーダーは3つのラインの交点となる。液膜には厚みがあり,その交点は丸みを帯びる。そのため,表面張力によりプラトーボーダーの液圧は低下する。一方,2 つの気泡の境界は平面に近いため,圧力は環境圧とさほど変わらない。その結果,圧力にアンバランスが生じて,平面に存在する溶液はプラトーボーダーに流れ込む。(p.52「シャンプーとビールの泡立ちの違い」


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