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今月のキーワード
ペニングトラップ/ イオンミリング/電気双極子能率/ 反水素/ホッケースティック曲線

●ペニングトラップ[Penning trap]
互いに反発する同種の荷電粒子を多数閉じ込める装置のひとつで,磁力線まわりのサイクロトロン運動と,磁力線方向の電界による同方向の閉じ込め作用を組み合わせたもの。荷電粒子の集団は,磁界に平行な軸のまわりに剛体的に回転する。磁界の効果は,回転軸からの距離の2 乗に比例する閉じ込めポテンシャルによって表される。オランダのペニング(F.M. Penning, 1894 〜 1953)の考案。なお,反水素合成などでは,電荷符号の異なる荷電粒子を多数貯め込んでいる例もある。(p.4「極低温中性プラズマ」,p.44「のろのろ反水素」)

●イオンミリング[ion milling]
高エネルギーのイオンが固体表面を削る効果を利用する表面加工プロセス。半導体,セラミックス,金属などを透過型電子顕微鏡で観察するための試料作成に用いる。あらかじめ薄膜にした材料に,真空中で数KeV程度の高速のイオンビームを当て,表面の原子を飛ばす。通常アルゴンイオンを用いる。(p.4「極低温中性プラズマ」)

●電気双極子能率[electric dipole moment]
古典的に電気双極子能率(EDM)は電荷分布の偏りがある場合に生じるが,大きさのない素粒子のEDMは素粒子のスピンに比例する。時間(T )を反転するとEDMは符号を変えるため,粒子とその反粒子を入れ替える対称性(CP対称性)を,より基本的なCPT 対称性のもと,有限の素粒子のEDMは破っていることを意味する。素粒子標準模型において,小林‐ 益川理論はCP対称性の破れの存在を説明するが,この理論が予言する電子や中性子のEDMは現在の観測の上限値に比べ非常に小さい。一方,多くの標準模型を超える理論はより大きなEDMを予言しており,近い将来EDM探索実験で発見される可能性がある。(p.24「ゼロへの挑戦」)

●反水素[antihydrogen]
陽子の反粒子である反陽子( 電荷がマイナスで質量が陽子と同じ)と電子の反粒子である陽電子( 電荷がプラスで質量が電子と同じ)からなる原子で,自然界には存在しない。加速器を用いて発生させた反陽子と,ベータ崩壊する放射性同位体から得られる陽電子とを,電磁場中で混合することにより,微量の反水素をつくることができる。反水素原子の構造( エネルギー準位)は,水素原子のものと等しいと一般には考えられているが,物理学の基本に関わる問題であり,わずかな違いがないかの研究が活発に進んでいる。(p.44「のろのろ反水素」,p.48「18歳からの物理:18 歳からの反物質」)

●ホッケースティック曲線[hockey stick curve]
地球の過去1000 年程度の平均気温の変化を表した,マン(Michael Mann)たちの求めた曲線のこと。彼らのグラフでは,西暦1000 〜 1900 年付近まで地球の平均気温はほぼ一定に推移していたが,1900 年以降急速に温度上昇したことが読み取れる。その温度一定部分がホッケーに用いられるスティック( 棒),温度上昇した部分が曲がった刃の形に似ているので,そう名づけられた。この図は国連の気候変動に関する政府間パネル( IPCC)が2001 年に発表した第3 次報告書で取り上げられ,地球温暖化の象徴的なグラフになった。この図に対しては,学問的,政治的な論争(ホッケースティック論争とよばれる)がある。(p.53「温暖化問題,討論のすすめ:地球温暖化と現代科学の問題点」)

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