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今月のキーワード
プリカーサー/ ファセット/ 磁場の凍結/偏光/ 渋滞/ イオンチャネル/ X線回折現象
●プリカーサー[precursor]
ある化合物を生成する過程で,その化合物の生成の化学反応に関わり,反応前にできる別種の化合物のこと。前駆体あるいは前駆物質ともよばれる。またプリカーサー状態はある状態に至るときに,その前にある状態のこと。本稿では,氷の核形成に必要な前駆体をプリカーサーとよんでいる。(p.4「固体表面上の第1層水分子」)

●ファセット[facet]
結晶や宝石の小さな切り子面のこと。結晶成長では,原子や分子が吸着して成長しやすい面と,逆に成長しにくい面とがある。成長しやすい面が成長していくと,成長しにくい面は平坦で安定性の高い面として残され,この面がファセット面となる。(p.4「固体表面上の第1 層水分子」)

●磁場の凍結[frozen-in of magnetic field]
荷電粒子が磁場を横切って動こうとすると,磁場と速度に垂直な力( ローレンツ力)を受けるため,粒子は磁力線に巻き付いた運動をすることになる。このため電離したガス(荷電粒子をたくさん含む)は磁場を横切って運動することができない。別の言い方をすると,磁力線は電離ガス( プラズマ)に引きずられて一緒に動くことになる。これを磁場のプラズマへの凍結という。(p.24「エバーシェッド流:100 年の謎が解けた?」

●偏光[polarized light, polarization]
光には色( 波長)だけでなく,肉眼では判別できないが偏光の状態という物理量がある。偏光とは,光( 電磁波)の振動の方向が規則的な状態の光のことである。光の振動がある1 つの方向に偏っている場合,直線偏光とよばれ,光の振動が円を描く場合,円偏光とよばれる。円偏光には右回りと左回りがある。一方で,偏光がない光とは,その振動のふるまいが乱雑になっている。こういった偏光がない光でも,たとえば,塵などに散乱されると( 部分的に)偏光になる。そのため,地球上でも宇宙空間でも偏光は生じている。(p.37「宇宙の特殊な光と生命を構成するアミノ酸」

●渋滞[jamming]
混雑により,集合全体が動けなくなる状態,または現象。交通流では,一般用語として渋滞を“traffic jam”とよぶ。流れている粉粒体が止まったり,詰まったりして動けなくなる現象についても広く用いられる。そうした動かない粉粒体の固まりを,工学的には"stagnation zone"とよび,古くからその解消法が研究されてきた。渋滞を起こした系では,液体が結晶化するときのようなはっきりした構造変化をともなわず,秩序変数は急激に変化しない。したがって,ガラス転移と比較・議論されることが多い。しかし,多様な系を結びつける一般的な概念として,渋滞が共通の特徴を有するのかどうかは,まだ明らかではない。(p.48「摩擦,力の連鎖,崩壊する果物の山」)

●イオンチャネル[ion channel]
細胞内外に高濃度存在するイオン(Na+,K+,Cl−など)を,受動的ですみやかに透過させるのがイオンチャネルである。特定のイオン種だけを透過させる選択性の高いもの(Na チャネル,Kチャネルなど)や,あまり選択性のないもの( グルタミン酸受容体チャネルなど)がある。またイオン流を制御するゲートを開くために,膜電位変化などの物理的刺激に応答するもの( 電位依存性チャネル)や化学的刺激に応じるもの( リガンド作動性チャネル)がある。(p.52「生物物理の最前線 イオンチャネルタンパク質分子の構造変化を追う」)

●X線回折現象[X-ray diffraction]
原子の大きさ( 1Å )に近い波長をもつ電磁波であるX線は,格子状に並んだ原子に当たると,その結晶面( 結晶格子)で干渉を起こす。X線の波長と結晶面間の距離により干渉が起こる角度が決まり( ブラッグ(Bragg)の条件),この方向に増強したX線が回折像として観察される。回折像から逆に原子座標が得られ,多数のタンパク質の立体構造が明らかになっている。この場合,試料の単結晶を作製し,単一波長のX線照射による回折像が解析に使われる。(p.52「生物物理の最前線 イオンチャネルタンパク質分子の構造変化を追う」

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