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今月のキーワード
s 波,p 波,d 波/ 秩序変数/ 散乱長/ クーパー対/ スケーリング関係/ エッジ状態/ ハンブリー・ブラウン- トゥイス効果
●s波,p波,d波[s-wave, p-wave, d-wave]
一般に軌道角運動量がl = 0,1,2 の状態を順にs波,p波,d波とよぶ。ここではとくに,クーパー対を構成している2 粒子の相対軌道角運動量をさす。通常の金属超伝導体のクーパー対はs 波,つまり軌道角運動量をもたず等方な形をしているが,p 波のクーパー対をつくる3 ヘリウム超流動や,d波の銅酸化物超伝導体ではクーパー対が量子化された角運動量を持って回転している。そのため,クーパー対の波動関数は非等方になる。(p.4「フェルミオンがボソンに変わるとき」))

●秩序変数[order parameter]
相転移現象において,対称性の低い相(秩序相)を特徴づける熱力学変数として導入される量。超流動転移の場合には,低温で非対角長距離秩序が生じるため,1体( ボソン)または2 体( フェルミオン)の密度行列の最大固有値に対する固有関数が秩序変数として用いられる。この固有関数は,ボソンの場合には粒子が凝縮する一粒子状態の波動関数,フェルミオンの場合はクーパー対の波動関数に対応する。(p.4「フェルミオンがボソンに変わるとき」)

●散乱長[scattering length]
低エネルギーでの量子力学的散乱を特徴づける定数。長さの次元をもつ。到達距離の短い中心力ポテンシャル中の低エネルギー散乱は,ポテンシャルの形状などによらず,散乱長as という単一のパラメータのみで記述することができる。入射運動量k → 0 の極限で,波動関数のs波の位相のずれがδ .−as k となり,as < 0 は波動関数が散乱中心に引き込まれるので引力,as > 0 は波動関数が外側に押し出されるので斥力に対応している。(p.4「フェルミオンがボソンに変わるとき」)

●クーパー対[Cooper pair]
多体の効果によってつくられるフェルミ粒子の対。2 個の粒子のみを考えると,粒子間の引力がある程度強くない限り束縛状態は形成されないが,ほかにも同種の粒子が多数存在すれば,どんなに引力が弱くても束縛状態が存在する。これは,同種粒子は同じ量子状態に入れないというパウリの排他率に起因する。フェルミ粒子がどんどん対をつくることで実現される低エネルギー状態がフェルミ超流動である。(p.4「フェルミオンがボソンに変わるとき」)

●スケーリング関係[scaling relation]
一般に2 つの物理量がべき乗の関係( 両対数プロットしたときに一定の傾きをもった直線に乗る)にあるとき,“スケーリング関係が成り立つ”という。有名なものとしては地震の頻度とそのマグニチュードの間に成り立つスケーリング関係(グーテンベルク‐リヒター則),良溶媒中の高分子の拡がりと分子量の間に成立するものなどがある。(p.14「トポロジカル液体のからみ合った話」)

●エッジ状態[edge state]
現実の系は有限の大きさをもち,半導体の試料にも端がもちろん存在する。試料端の存在は電子に対して束縛ポテンシャルを与え,二次元電子系に垂直に磁場をかけた場合のランダウ準位のエネルギーは,端に近づくにつれて上昇する。このとき,試料の端に沿って運動する電子状態が存在するが,これらはエッジ状態(端状態)とよばれる。エッジ状態は,古典的には試料端でのサイクロトロン回転運動の反射によるスキッピング軌道として理解される。(p.32「ν =5/2 状態における準粒子の電荷と非可換的統計性」)

●ハンブリー・ブラウン‐トゥイス効果[Hanbury Brown and Twiss effect]
ハンブリー・ブラウン(R. Hanbur y Brown)が開発した強度干渉計(intensity inter ferometer)の作動原理として,1956年に彼とトゥイス(R. Q. Twiss )によって提唱された現象。近接して設置された2 つの受光器で受ける点状光源の強度に相関があるとするもので,波動光学的には容易に説明ができる。量子力学的な解釈には紆余曲折があったが,現在では広く2 粒子相関効果として認識され,光子などのボース粒子のみでなく,電子のようなフェルミ粒子に対しても実験的に確認されている。(p.46「新天地を得たハンブリー・ブラウンの雑音相関法」)

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