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今月のキーワード
パレート分布 / ナッシュ均衡 / アポトーシス / 細胞骨格 / ストレス線維
●パレート分布[Pareto distribution ]
多くの自然現象や経済・社会現象において見られる,べき乗則。確率分布関数が,確率変数が非常に大きいところで変数のべき乗で減少しているとき,その分布を(広義の)“パレート分布”とよび,そのべき指数の絶対値から1を引いた値を“パレート指数”とよぶ。特にパレート指数が1のときは“ジップ分布”ともよばれ,これは比較的多くの現象に見られる。それが1未満になると寡占状態が出現することから,パレート指数1はある意味での臨界点となっていると考えられる。(p.23「経済は次の物理科学となりうるか?」)

●ナッシュ均衡[Nash equilibrium]
ゲーム理論において,ナッシュ (John Forbes Nash) によって1950年に発見された概念。ゲームでは与えられたルールのもとで,各プレイヤーが自己の利得を最大化しようと行動する。すべてのプレイヤーについて,他のプレイヤーの行動のもとで自分の利得が最大になるような行動が存在することをナッシュ均衡とよぶ。これは数学から出て,経済学で用いられ,ナッシュは1994年にノーベル経済学賞を受賞した。なお,ナッシュの半生は映画「ビューティフル・マインド」に描かれている。(p.23「経済は次の物理科学となりうるか?」)

●アポトーシス[apoptosis]
“プログラムされた細胞死”,“予定細胞死”あるいは“細胞自殺”ともよばれ,個体の生存維持のために積極的に行われる細胞死である。外傷や虚血などで生じる壊死(ネクローシス)とは区別される。発生過程では決められた場所で決められた時間にアポトーシスが起こって適切な形態形成が進行する。たとえば指は指間の細胞死で形成される。病的細胞やガン細胞の多くもアポトーシスで除去される。細胞内のカスパーゼとよばれるタンパク質分解酵素群の活性化が中心機構である。(p.37「器官のサイズは力学で決まる?」)

●細胞骨格[cytoskeleton]
細胞形態や強度の維持,細胞運動(形態の連続的変化)の調節などに関わる細胞内の線維状構造。また,オルガネラ膜の変形,移動,空間配置の調節,分子の運搬,収縮力の発生などを通して,膜や分子の代謝,細胞分裂,鞭毛・繊毛運動,筋収縮で中心的役割を果たす。その太さによって,外径7 nm程度の細い線維(アクチン線維),外径約10 nmの中間径線維(ケラチン線維など), 外径25 nm程度の太い線維(微小管:チューブリン)に分類される。(p.37「器官のサイズは力学で決まる?」)

●ストレス線維[stress fiber]
多数のアクチン線維がミオシンで架橋されて束になった構造で,ATP依存的に強い収縮力を発揮する。その両端は,細胞-基質間接着構造や細胞間接着構造に終端しており,細胞の変形や運動を引き起こす主役である。収縮力は小分子量GTPaseのRhoの下流で生じるミオシン軽鎖(MLC)のリン酸化で調節される。ストレス線維は,自身の能動的張力や機械刺激による受動的張力で発達(外径が増大)するという特徴を有しており,名称の由来になっている。(p.37「器官のサイズは力学で決まる?」)