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今月のキーワード
生体モーター / 進化・適応 / プリオン神経変性症 / 26Al / 放射年代測定
●生体モーター[biological motor]
分子モーター(molecular motor)ともいう。本文で言及している微小管―ダイニン系や微小管―キネシン系のようなリニアモーターと,ATP合成酵素のような回転モーターがある。筋肉のアクチン-ミオシン系もリニアモーターである。両者とも,タンパク質分子の立体構造転移に基づくステッピングモーターである。キネシンやダイニンはATP分解酵素であり,この酵素活性は微小管(チューブリンというタンパク質の繊維状集合体)との相互作用によって活性化される。ATP加水分解反応という発エルゴン反応を,方向性のある運動を生むタンパク質の構造転移に共役させて,全過程を自発的にするのが分子モーターである。運動方向は分子モーターごとに決まっている。(p.4「数理解析で生命の国を探検する」)

●進化・適応[evolution,adaptation]
遺伝情報(遺伝子型)に突然変異や組換えが生じた場合,その結果として生物学的機能(表現型)が変化する場合がある。さらに,与えられた環境中において,この表現型の変化がこの遺伝子型の生存にとって有利な変化であり(これを「適応度」が高くなる,という),かつ,自然淘汰によりこの新たな遺伝子型がその生物種集団中で多数を占めた場合,「生物種はこの環境に適応した」という。このように,環境が規定する適応度の山を登る過程を「適応進化」とよぶ。一方,表現型がほとんど変化しない場合の遺伝子型の時間発展を「中立進化」とよぶ。(p.4「数理解析で生命の国を探検する」)

●プリオン神経変性症[prion neurological disease]
狂牛病,ヒトのクロイツフェルト-ヤコブ病などの,伝染性の神経変性症の病原体がプリオンというタンパク質分子であることから名付けられた。遺伝子をもたない病原体の最初の発見である。この病原体の感染による患者体内での病原体の自己増殖は,タンパク質分子が合成されることによるのではなく,すでに存在している正常な立体構造をもつプリオンPrPCが,病原性立体構造をもつプリオンPrPScへ自己触媒的に構造転移することによる。β構造に富むPrPScはβ構造を介して繊維状の強固な凝集体(アミロイド)を形成し,脳をスポンジ状にする。(p.4「数理解析で生命の国を探検する」)

●26Al[aluminum-26]
アルミニウムの,質量数が26の不安定同位体。超新星爆発などで生成されると考えられ,約74万年の半減期で26Mgに放射壊変する。ある種の隕石を分析すると,現在は存在しないがそれが形成したときには26Alが含まれていたことがわかる。複数の固体物質の形成年代差(相対年代)を求めるのに利用できる。また26Alの放射壊変熱は,原始太陽系における天体内部の熱源として寄与した可能性がある。(p.54「惑星科学入門 第4回 小惑星と隕石」)

●放射年代測定 [radiometric dating]
放射性核種の放射壊変を利用した年代測定法。用いる核種によっていくつもの方法が考案されているが,適用できる時代や得られた年代が意味するものなどが異なる。物体が閉鎖系(物質の出入りがない状態)になったあと,系内の放射性核種は一定の割合で放射壊変して別の元素(核種)に変わっていく。残っている親核種やできた娘核種の量などは時間の関数なので,これらの量を測定して系(鉱物など)の形成時などを求めることができる。(p.54「惑星科学入門 第4回 小惑星と隕石」)