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今月のキーワード
微細構造定数 / 電子の異常磁気モーメント / カイラル対称性 / 南部-ゴールドストン粒子 / PCAC関係 / ウィルソン霧箱
●微細構造定数[fine-structure constant]
電磁気相互作用の強さを示す無次元の定数でaと表記される。SI単位系ではa = e2/(4πε0hc)=1/137.03…で,eは基本電荷,h=h/(2π)でhはプランク定数,cは真空中の高速度,ε0は真空の誘電率である。cとε0は定義として決められている定数であることに注意。aはゾンマーフェルト(A. Sommerfeld)によって1916年に導入された。水素原子のスペクトル線の微細構造の説明に使用されたので,今も「微細構造」をその名の中に残している。(p.6「微細構造定数aを究める」)

●電子の異常磁気モーメント[anomalous magnetic moment of the electron]
素粒子の磁気モーメントの大きさは,ボーア滋子を単位として無次元数であるg因子の大きさで示す。相対論的量子力学では電子のようなスピン1/2で内部構造のない素粒子の場合,gは2であることが知られている。が,実際には,量子場の効果により,gは2からずれている。このずれを電子の異常磁気モーメント,あるいはg−2とよぶ。通常a=(g−2)/2の値が示されることが多い。(p.6「微細構造定数aを究める」)

●カイラル対称性[chiral symmetry]
ディラック粒子のもつ大域的な対称性(変換が時空点に依存しない対称性)の1つ。ディラック粒子の4成分を右手成分と左手成分に分け,それぞれの成分を逆位相のU(1)変換するのがカイラル変換であり,その変換で不変であることをカイラル対称性という。ディラック粒子の作用は4成分を同位相で回すU(1)変換で不変であるが,質量がゼロの場合は,カイラル変換でも不変になるので,「ゼロ質量のディラック粒子はカイラル対称性をもつ」といわれる。(p.56「計算物理 第11回(素粒子編)ハドロン質量のクォーク質量依存性と連続極限」)

●南部-ゴールドストン粒子[Nambu-Goldstone particle]
場の量子論では,大域的な対称性に対して理論が不変であっても,真空状態(エネルギーのもっとも低い状態)がその対称性に対して不変でないことがある。この現象を自発的対称性の破れとよぶ。回転などの連続的な対称性が自発的に破れるとゼロ質量の粒子が現れるが,これが南部-ゴールドストン粒子である。たとえば,ワインの瓶の底のような形をしたポテンシャルを考えると,このポテンシャルは回転に対して不変である。一方,エネルギーの最低状態は盛り上がった中心ではなく,円状にへこんだ部分であるので,その1つを真空に選ぶと,真空は回転に対して不変でない。これが自発的対称性の破れである。また,真空と同じエネルギーの状態が無数にあるので,無限小のエネルギーを与えるだけで励起状態が現れ,これが南部-ゴールドストン粒子である。(p.56「計算物理 第11回(素粒子編)ハドロン質量のクォーク質量依存性と連続極限」)

●PCAC関係[partially conserved axial current relation]
QCDの作用はクォークがゼロ質量であるとカイラル対称性をもち,ネーターの定理から軸性カレント(axial current)とよばれる保存カレントが存在する。しかし,ゼロでないクォーク質量のためカイラル対称性が壊れるので,軸性カレント保存の関係は変更を受ける。この変更を受けた関係が「部分的に保存する軸性カレント関係」,英語の頭文字を取ってPCAC関係,である。QCDでは,自発的にカイラル対称性が破れ,π中間子がゴールドストン粒子として現れるが,クォーク質量のためにゼロ質量ではなくなる。PCAC関係を使うとその質量の2乗がクォーク質量に比例することが示せる。(p.56「計算物理 第11回(素粒子編)ハドロン質量のクォーク質量依存性と連続極限」)

●ウィルソン霧箱[Wilson cloud chamber]
過飽和状態の気体の中を荷電粒子が通過するときに生じる霧滴によって荷電粒子の飛跡を観測する装置で,その原理はウィルソン( C. T. R. Wilson ) により発見されたのでウィルソン霧箱という。霧箱は強い磁場の中で使用されるので粒子の荷電の符号や運動量も知ることができる。陽電子の発見(1932年),μ粒子の発見(1936年)などは,この霧箱によってなされた。(p.61「中野‐西島‐ゲルマンの法則」)