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今月のキーワード
クーロンブロッケード / ショット雑音 / 1次温度計 / 一様双曲性
●クーロンブロッケード[Coulomb blockade]
孤立した金属の島状電極があるとし,その周辺回路に対する静電容量をCと置く。この島電極に,電荷qを与えて帯電させると,静電エネルギーはq2/2Cとなる。外部電極とこの島をトンネル接合でつなぐ。素電荷eをもつ電子がこの島電極にトンネルするとe2/2Cだけのエネルギー増があり,温度ゆらぎがこれより小さくてこれをまかなえないと,トンネルは禁止されてしまう。これをクーロンブロッケードとよぶ。(p.18「ナノサイズ冷凍回路」)


●ショット雑音[shot noise]
金属を流れる電流は電子という離散的電荷をもつ粒の流れによるものであり,金属中の電子は絶対零度においても空間的にはランダムに運動している。したがって,有限電圧によって流れる電流に対して,ちょうど屋根をたたく雨音がランダムなように,電子の粒子性によって電荷の流れにゆらぎが発生する。これがショット雑音であり,素電荷eと流している平均電流の積の平方根に比例し,温度によらない。(p.18「ナノサイズ冷凍回路」)


●1次温度計[primary thermometer]
温度計を「目盛る」とき,温度のわかっている物体(熱浴)と熱平衡状態にして目盛りを付けていく方法がある。こうして得られる温度計を2次温度計とよぶ。これらはこのように,広い意味での「較正」を必要とする。これに対し,熱力学,統計力学の原理に立脚し,較正なしで温度を計測できる温度計を1次温度計とよぶ。たとえば,ヘリウムの気体は,室温付近ではほぼ理想気体であり,較正をしなくても理想気体の状態方程式によって温度を算出できる。(p.18「ナノサイズ冷凍回路」)

●一様双曲性[homogeneous hyperbolicity]
本文の式(2)で表される連続時間の力学系や離散時間の場合も含めて,非線形力学系の特性を表す。力学系が双曲的であるとは,ちょうどコラム2の図のように,位相空間の領域が時間の経過とともにある方向には縮み(安定多様体),別の方向には伸びる(不安定多様体)という性質をもつことを意味する。結果として,このような系はカオスでいう奇妙な(ストレンジ)アトラクターをもち,系のふるまいは初期条件に敏感で,カオス的である。特に一様双曲性は系に摂動を加えても位相的な構造が壊れないという,構造安定な双曲的力学系の性質を表す。ところが,一般に力学系は必ずしも構造安定とは限らず,物理の問題を議論する場合には一様双曲性の仮定はきつすぎる。しかし,その数学的性質が素直で扱いやすく,それを仮定すると,平衡から遠く離れた系の統計力学の厳密な理論が構成できるというのが著者ルエルの本文での主張である。(p.27「非平衡物理についてのETとの対話」)



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