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今月のキーワード
ベル状態 / 宇宙天気予報 / 磁力線のリコネクション / ホイーラー‐ド・ウィット方程式 / デコヒーレンス / ブロッホ振動 / ストライプ秩序
●ベル状態[Bell state]
独立した2つの量子ビットの状態を表現するさいに|00〉,|01〉,|10〉,|11〉という4つの状態を基底にとるのが通常であるが,からみ合いの状態にある2量子ビットの状態を表現するには上記の基底の線形結合によってつくられる(|00〉+|11〉)/√2,(|00〉−|11〉)/√2,(|01〉+|10〉)/√2, (|01〉−|10〉)/√2の4つのベクトルを基底としてとる方が都合がよい。この基底となる状態はベル状態とよばれる。(p.4「原子,イオンが切り拓く量子情報技術の最前線」)


●宇宙天気予報[space weather]
人工衛星や有人宇宙飛行が実現して以来,宇宙空間の状態が人類の生活に影響を及ぼすようになった。太陽からの高エネルギー陽子流や,地球磁場にとらえられた放射線帯の電子やイオンは,人工衛星の故障を引き起こし,宇宙飛行士に傷害を与えるおそれがある。またオーロラに伴って流れる電流によって誘導される電流は,高緯度の送電ネットワークを破壊することがある。このような障害を軽減するために,宇宙空間の状態変化を予知しようとする研究。(p.23「宇宙天気予報とは」)


●磁力線のリコネクション[magnetic reconnection]
プラズマには,磁場からエネルギーを得ることよってプラズマ粒子が加速されるという過程がある。リコネクションはそのような過程の1つであって,方向の異なる磁力線が接しているとき,接触面をはさんで磁力線がつながり,つながった磁力線が縮まろうとする動きに伴ってイオンや電子が加速されるものである。太陽コロナや惑星磁気圏に見られる爆発的なイオンや電子の加速は,磁力線リコネクションによって起きる。(p.23「宇宙天気予報とは」)

●ホイーラー‐ド・ウィット方程式[Wheeler-DeWitt equation]
時空多様体にどのような座標を張るかはまったく任意であり,作用積分といった物理的な量が座標の任意の変換に対して不変でなければならない。一方,変換に対する不変性は保存則を導くことはネーターの定理として広く知られている。したがって,4次元時空の4つの一般座標変換に応じたこの不変性は4つの保存則を導く。この方程式は一般座標変換に対する不変性を保障するために要求される拘束条件とみなすこともできる。すなわちハミルトニアンがゼロであるという拘束条件が導かれてハミルトン拘束条件とよばれる。一方,一般相対論を時空多様体の動力学という見方に立って3次元空間の時間発展形式(ADM形式)で書いて量子化の処方を行うことができる。ディラックの拘束条件付量子化の処方にしたがえば,時空動力学と物質場を含むハミルトン拘束条件を状態ベクトルを制限する条件に書き直したものがホイーラー‐ド・ウィット方程式である。(p.30「時間と量子力学」)


●デコヒーレンス[decoherence]
量子力学の状態ベクトルは線形方程式に従うので,いくつかの解ベクトルを重ね合わせた(足し合わせた)ものも解ベクトルである。そのさい,各解ベクトル間の相対的な位相関係が乱されていなければこの状態は「コヒーレンスがある(coherent)」と表現する。デコヒーレンスとはコヒーレンスが失われていることをいう。たとえば,2スリットによる干渉縞の現象は左スリットと右スリットを通った2つの解ベクトルの間のコヒーレンスが存在するために生じる。またEPRや観測のウィグナー過程で生じるからみ合い(entanglement)状態が重なり合った全状態ベクトルで,からみ合った状態間の位相関係が維持されることが量子計算や量子通信に本質的である。一方,「波動関数の収縮」の確率解釈を重視するコペンハーゲン解釈ではこの位相関係よりは各成分の間の振幅関係を重視する。注目している自由度以外の諸々の自由度との相互作用でこの位相関係が短時間に乱されること(デコヒーレンス)が量子描像から古典描像へ転化する原因であると考えられている。(p.30「時間と量子力学」)


●ブロッホ振動[Bloch oscillation]
一様電場がかけられた結晶中の電子は,一様に加速されるだけでなく,ある運動量において運動量の符号が反転し,振動的な運動をする。この振動状態はブロッホ振動とよばれ,バンド端における電子波の反射として説明される。本実験では光格子中の原子波のブロッホ振動を観測している。(p.37「極低温フェルミ原子を用いた原子干渉計」)


●ストライプ秩序[stripe order]
高温超伝導体の母物質である反強磁性絶縁体(モット絶縁体)では,シリコンのような通常のバンド絶縁体と異なり,電子に付随するスピンや軌道の自由度が生き残っている。モット絶縁体にドープすると,キャリヤーのもつ電荷の自由度と生き残ったスピンや軌道の自由度との結合によって,多彩な秩序状態が現れる。ストライプ秩序はこのような秩序状態の一例で,電荷とスピンが一次元的に自己組織的に配列した秩序状態である。ストライプ秩序は,ランタン系銅酸化物超伝導体の中性子回折実験の非整合ピークを説明する有力なモデルであり,マンガンやニッケルの酸化物でもその存在が示唆されている。(p.39「銅酸化物高温超伝導体に共通する電荷秩序とスピンゆらぎ」)



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