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今月のキーワード
コンダクタンス / クーロンブロッケード / 弾道(バリスティック)電子 / 量子サイズ効果 / ELデバイス / ダングリングボンド / 量子ドットレーザー / 量子ドット光増幅器 / 量子ドット光スイッチ / 磁気抵抗スイッチ効果 / 金属ナノ接合 / 渦巻状磁気構造 / ナノ磁気円盤 / 磁気双極子 / 加工硬化 / ホール‐ペッチの関係式
●コンダクタンス[conductance]
試料に微小な電圧Vを印加したときに電圧に比例して電流Iが流れる(オームの法則)。その比例係数G=I/Vをコンダクタンスという。コンダクタンスは電気抵抗R=V/Iの逆数である。コンダクタンスや抵抗は試料の大きさや形状に依存する。単位体積をもつ立方体状試料のコンダクタンスを電気伝導度, その逆数を電気抵抗率といい, それらは固体の固有の性質を表す.(p.6「ナノ領域に現れる新しい電気伝導現象」)


●クーロンブロッケード[Coulomb blockade]
非常に小さな金属のドットあるいは半導体ドットにナノメートルの隙間で電極をつないぐと, 電子は電極とドットの間をトンネル効果で移動する。ドットが大きい場合この電子の移動は自由におこるが, これらのドットがナノメートル程度に小さくなると, 電子の移動にともなうクーロンエネルギーの変化のために, この電子の移動が阻止(ブロック)される。これをクーロンブロッケードという。(p.6「ナノ領域に現れる新しい
電気伝導現象」)

●弾道(バリスティック)電子[ballistic electron]
固体中にありながらあたかも真空中のように無散乱で走行する電子をさす。たとえば,半導体の寸法が電子の平均自由行程より小さくなると,弾道性が生じ散乱要因は系の境界だけになる。通常の伝導とは異なり,エネルギー損失がなくドリフト速度が強電場でも飽和しない。このような理想的な電子伝導状態は,これまで特殊構造や極低温に限定されてきたが,超微細化技術の進展により,最近は実用素子を含むナノ構造において室温で報告されるようになってきた。(p.14「量子サイズナノシリコンの機能と応用」)

●量子サイズ効果[quantum size effect]
電子は“粒子”と“波”の2つの性質をもっている。半導体結晶の直径を10nm以下のナノ粒子にすると,電子は波としての性質が強くなる。さらにナノ粒子が球形であると,電子の動き回れる自由度は極端に制限され,狭い空間に電子は閉じ込められ,その運動エネルギーは増加する。すなわち粒子の直径が小さくなるとエネルギーは増加する。これが量子サイズ効果である。Si結晶を5nm以下にすると,この量子サイズ効果によって,バンドギャップエネルギーは急に大きくなる(粒径の2乗に反比例する)。(p.20「シリコンナノ粒子からの3原色発光」)


●ELデバイス[EL(electroluminescence)device]
発光物質を透明電極と金属電極で挟み,電極間に電圧を加えてエネルギーを与える。するとこの物質はエネルギーによって励起され発光する。このELには,大別して無機ELと有機ELがある。無機ELは,発光層にZnSなどを用い,またMn,Al,などの元素を添加することによって,発光色を変えることができる。他方有機ELは,発光材料を変えることによって,マルチカラー発光が得られる。比較的簡単なプロセスで,しかも高輝度,高効率のデバイスが作製できるため,各種ディスプレイ装置への応用が期待されている。その他本稿で取り上げたnc-Siがある。(p.20「シリコンナノ粒子からの3
原色発光」)
●ダングリングボンド[dangling bond]
アモルファスSiのように,原子間の結合距離や結合角がばらばらである結晶すなわち原子配列に周期性をもたない結晶,SiO2/Si構造の界面や多結晶の粒界に,原子結合にあずからない“未結合手”(これをぶらぶら結合あるいはダングリングボンドという)が多数存在する。ナノSiでは,Si微結晶の周囲が薄い酸化膜(SiO2)で覆われている。このSiとSiO2との界面には,通常多数のSiダングリングボンドが存在する。このSiダングリングボンドをESRで検出し,Siの物性評価を行うことができる。(p.20「シリコンナノ粒子からの3原色発光」)
●量子ドットレーザー[quantum-dot laser]
活性領域に量子ドットを用いた半導体レーザー。1982年に東京大学の荒川と榊によって提案された[Y. Arakawa and H. Sakaki:Appl. Phys. Lett., 40, 939 (1982).]。ナノサイズの半導体結晶である量子ドットでは,量子閉じ込め効果によって電子準位が完全に離散化する。活性領域に注入されたキャリヤーが量子ドットの基底準位に集中する結果,きわめて効率のよい半導体レーザーが実現する。現在,自己形成InAs量子ドットを用いて,通信用光源としての実用化を目指した研究が進められている。(p.26「量子ドット光デバイス」)
●量子ドット光増幅器[quantum-dot optical amplifier]
活性領域に量子ドットを用いた半導体光増幅器。2001年に富士通研究所の菅原と秋山によって提案された[M. Sugawara:United State Patent, US 6,590,701 B2.]。増幅器の一方の端面から光信号を入射させると,量子ドットによる誘導放出によって光信号が増幅されて,反対側の端面から出力光信号が得られる。20dBm以上の高出力特性と100nm以上の広帯域利得をもち,従来のファイバー増幅器や半導体増幅器を凌駕する性能を発揮する。現在,自己形成InAs量子ドットを用いて,光通信用増幅器としての実用化を目指した研究が進められている。(p.26「量子ドット光
デバイス」
●量子ドット光スイッチ[quantum-dot optical switch]
活性領域に量子ドットを用いた半導体光スイッチ。2001年に富士通研究所の菅原と秋山によって提案された[T. Akiyama et al. : IEEE Photon. Tech. Lett. 14, 1139 (2002).]。量子ドットのスペクトルホールバーニングに起因する超高速光非線形効果によって,光波長変換,光波形整形,光ゲート等のさまざまな光信号処理を行うことができる。ビットレートにかかわらず数100Gb/sまでの高速光信号の処理が可能で,従来の半導体光スイッチに比べて圧倒的に高速・高効率である。(p.26「量子ドット光デバイス」)
●磁気抵抗スイッチ効果(超巨大磁気抵抗効果)[magneto-resistive switch effect]
本稿で説明した磁気抵抗スイッチ効果は,発見されてからまだ間もないことから,あえてイメージのつかみやすい超巨大磁気抵抗効果という言葉をタイトルで用いた。巨大磁気抵抗効果(giant magnetoresistance effect: GMR)は,本稿および記事「ナノスケール磁性体」に説明があるように,非磁性体を挟んだ強磁性体間の相対的な磁化の向きに依存して,その電気抵抗が変わる効果であり,伝導に寄与する電子のスピン依存散乱でその効果の起源が説明される。また,ペロブスカイト型遷移金属酸化物で観測される,磁場誘起のいわゆる金属‐絶縁体転移が,超巨大磁気抵抗効果(colossal magnetoresistance effect: CMR)とよばれている。本稿に述べたように,磁気抵抗スイッチ効果は,このどちらともまったく異なる起源をもつと同時に,その起源には解明されていない点が多い。(p.31「GaAs上の金属ナノ接合における
超巨大磁気抵抗効果」)
●金属ナノ接合[metal-semiconductor nano-scale junction]
本稿においては,金属ナノ接合という言葉を,半導体上にナノメートル長さの間隙をもって作製された複数の金属微細構造を示すために用いた。本稿で扱う材料では,このような微細構造において,伝導現象を担う電子が金属と半導体という異種材料の界面を越えて流れていると考えられ,この異種材料が接している構造を「接合」と表現したわけである。(p.31「GaAs上の金属ナノ接合における超巨大磁気抵抗効果」)
●渦巻状磁気構造[vortex magnetic structure]
面内磁化をもつ強磁性薄膜ドットにおいて,隣接原子間の磁気モーメントを平行に揃えようとする交換エネルギーと,磁極の発生を阻止しようとする静磁エネルギーが競合する結果,モーメントの方向をわずかずつ変化させて全体を渦巻状に配置した磁気構造をいう。サイズ,形状,膜厚が適当な範囲にあり,面内異方向性が等方的に近いことが必要条件である。渦の中心付近では隣接モーメント間の角度が大きくなり,交換エネルギー的に不利になるため,面垂直方向にスピンを向けた吹き出し磁化スポットが形成される。(p.37「 ナノスケール磁性体」)
●ナノ磁気円盤[nano-scale magnetic disk]
電子線リソグラフィーやX線リソグラフィー等の極微細加工技術を用いて強磁性体(強磁性3d遷移金属Fe,Co,Niやそれらの合金など)をナノスケールの微小円盤に加工したものを総称してナノ磁気円盤とよぶ。このナノ磁気円盤中には,そのサイズや良好な軸対称性を反映して磁気渦構造が出現する。また,円盤直径が数10nm以下になると,アスペクト比(円盤の直径/厚みの比)が1よりも十分に大きい場合に面内,逆に1よりも十分に小さい場合面直に磁化を揃えた単磁区構造が出現する。(p.44「ナノ磁気円盤格子の多彩な物性」)
●磁気双極子[magnetic dipole]
電気における電荷に対応して,磁気について磁極または磁荷を考え,正負の磁極の対を磁気双極子という。しかし,電荷とは異なり磁極は単独には取り出せないので,磁気双極子が磁気の基本要素となる。具体的には,±m[Wb]の磁極が距離L[m] 隔てて対を成すとき磁気モーメントMはそれらの積mL[Wbm]で与えられる。一方,磁気モーメントMは強さi[A]の電流が面積S[m2]の電流閉回路を形成していると見なすことが出来る。磁気モーメントMが距離r[m]離れた位置につくる磁場を考えるとき,rがLや√Sに比べ十分に大きい場合に,この対を磁気双極子,Mを磁気双極子モーメントとよぶ。(p.44「ナノ磁気円盤格子の多彩な物性」)
●加工硬化[work hardening]
塑性歪(永久変形)を生じた材料の降伏強さや硬さが,これを生じる前の値よりも大きくなること。塑性歪は,周期的な原子配列によって形成される結晶中の配列のずれ(=転位)が,外的応力によって発生・移動することよって増大する。この転位密度が大きくなると,互いにその運動を干渉するようになり,より大きな応力が転位運動に必要となる結果,降伏強度や硬さが増大する。別名:歪硬化。(p.49
「 ナノコンポジットメタル」)
●ホール‐ペッチの関係式[Hall-Petch relation]
多くの単結晶粒子からなる多結晶体を変形させる場合,塑性歪を与える転位運動は粒子間を伝播することになる。このさい,原子配列が不連続である粒子界面(=粒界)で転位の伝播が妨害されるため,粒界が多い微細結晶粒体ほどこの効果も顕著となり,より大きな外的応力が必要となる。このような降伏応力(σy)と結晶粒子径(d)との関係は,ホール‐ペッチの関係式σy=σi+kd−1/2で表される。ただし,σi, kはそれぞれ単結晶での平均降伏強度,定数である。(p.49「 ナノコンポジットメタル」)

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