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今月のキーワード
局所性 / 多項式時間 / EPRペア / フォン・ノイマンエントロピー / オンサーガーの相反定理 / 暗黒状態
●局所性[locality]
ある場所で起こった出来事が,遠く離れた別の場所に瞬時に影響を及ぼすことはないという性質。相対論では,信号の伝達速度は光速度を超えないし,またそれが破れるといろいろと不都合が生じるので,自然を記述する理論は局所性をもつと考えたくなる。一方,ベルの不等式の破れを示す実験結果は局所性と完全性を同時にもつ理論を否定している(局所性を直接否定しているわけではないことに注意)。(p.15「量子エンタングルメント:最新の視点」)


●多項式時間 [polynomial-time]
計算量理論においては,問題の難しさを評価するのに,入力のサイズが大きくなるにつれて計算時間(計算のステップ数)がどの位増えるかに着目する。入力の数(たとえば素因数分解したい数)の桁数をnとしたとき,計算時間がna(aはnに寄らない定数)以下で済む場合,多項式時間で解けるという。逆に,計算時間が例えば10nのようにnに対して指数的に増加する場合は,手に負えない程難しい問題だと考えられる。(p.15「量子エンタングルメント:最新の視点」)


●EPRペア[EPR pair]
量子力学によれば,遠く離れた2つの粒子が,エンタングルメントとよばれる特殊な相関をもつことがあり得る。そのような相関を最初に取り扱ったEPR論文では,位置や運動量のように,連続した値をとる物理量がエンタングルした状態が考察された。しかし,もっと単純な,スピン1/2粒子が最大限エンタングルしている場合でも,EPRペアとよぶことが多い。(p.15「量子エンタングルメント:最新の視点」)

●フォン・ノイマンエントロピー [von Neumann entropy]
密度行列ρの関数S(ρ)=−Tr[ρlog ρ]。密度行列ρの固有値を{p1,p2,...,pn}とすると,フォン・ノイマンエントロピーの表式は−Σi pi log piに一致する。これは, piを確率と見なした場合のシャノンの情報エントロピーに他ならない。この意味で,フォン・ノイマンエントロピーはシャノンの情報エントロピーの自然な拡張になっており,量子系に対する無知の度合いを測る指標になっている。(p.15「量子エンタングルメント:最新の視点」)


●オンサーガーの相反定理[Onsager's reciprocal theorem]
1931年オンサーガー(L. Onsager)により示された,線形非平衡熱力学の基本的な定理の1つ。熱平衡近傍の線形非平衡状態では,熱力学的な力2種類a, bが与えられたときに対応する流れA, B は,A=xa+yb, B=za+wb と書き表されるが,磁場や角速度などがない場合にはz=yが成り立つ。これは微視的な時間発展の時間反転対称性に基づいて示される。線形非平衡統計力学では,散逸揺動定理に含まれる。(p.25「ブラウンモーター」)


●暗黒状態[dark state]
原子,あるいは分子の2つの基底状態と1つの励起状態の間で光遷移が許容されているとき,2つの基底状態の適当な線形結合をとって光遷移の確率がゼロになる状態をつくることができる。このような光とまったく相互作用しない状態を暗黒遷移という。暗黒状態は,最初,誘導ラマンスペクトルの中心にでる非常にシャープな黒線で実験的に確かめられ,高感度磁力計や,原子気体をナノケルビン領域の極低温に冷却する手段として用いられている。(p.44「新しい原子磁力計でサブフェムトテスラの感度を達成」)



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