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今月のキーワード
ARPES / 円偏光アンジュレーター / コヒーレント成分,インコヒーレント成分 / レーリー・プレセット方程式 / 銀河団 / 活動銀河中心核 / 線張力 / 熱電発電効率
●ARPES[angle resolved photoemission spectroscopy]
光電子の運動エネルギーを測定するさいに,単結晶試料表面に対して特定の方向に放出される電子だけを限定して運動量をも決定することをARPESとよぶ。実験で決められる光電子のエネルギーと運動量の双方を結晶中での電子の状態に焼きなおすことで,結晶中での電子のエネルギーと運動量(いわゆる波数)との関係が実験的に決められる。試料表面の法線に対する極角と偏角を変えることで広い波数範囲の情報が得られる,(p.26「光電子分光は何を見てきたのか」)


●円偏光アンジュレーター[herical undulator]
SPring-8やフォトンファクトリーのような高エネルギー円型(陽)電子加速器は円弧を直線でつないだ形の超高真空の容器の中を(陽)電子が光速に近い速度で走っている。この直線部に多周期の磁場をかけて光を発生する光源をアンジュレーターとよぶ。特にらせん磁場をかけると電子がらせん運動するために他では得られない強力な円偏光が発生する。このような装置を円偏光アンジュレーターとよび,わが国の技術が世界をリードしている。(p.26「光電子分光は何を見てきたのか」)


●コヒーレント成分,インコヒーレント成分[coherentpeak, incoherentpeak]
単純金属や半導体のような場合には,固体中での浅い占有電子帯にいる電子の間の相互作用は弱いので,電子状態は電子帯(バンド)という一電子的な概念で理解できる。この状態からの光電子のエネルギーと波数は始状態をよく反映しておりコヒーレント成分(またはピーク)とよばれる。しかし電子間の相互作用や,他の素励起(たとえばフォノンやマグノン等)との相互作用が強い場合は光電子は始状態をよく反映するとはいいがたい。これをインコヒーレント成分(またはピーク)とよぶ。(p.26「光電子分光は何を見てきたのか」)

●レーリー・プレセット方程式[Rayleigh-Plesset equation]
静水中の気泡の半径Rの時間変化を記述する運動方程式。流体力学の基本方程式であるナヴィエ・ストークス方程式から導かれる。気泡内部の圧力,外部圧力,流体の粘性度,気液界面の表面張力などがパラメーターとなる。(p.34「泡の不思議,バブルの効用」)


●銀河団[cluster of galaxies]
宇宙には銀河は均一に分布しているわけではない。これらは宇宙初期の密度ゆらぎが重力不安定性によって成長した結果であり,銀河団はそのような宇宙の高密度ピークで最大規模のものである。銀河団では,100から1000個程度の銀河や1億度程度の高温プラズマが暗黒物質の重力ポテンシャルによって閉じこめられており,主としてX線や可視光で観測される宇宙で最大の天体である。最近の観測によって,銀河団どうしの衝突合体や,AGNジェットと高温プラズマとの相互作用の様子がみえてきたが,特に高温プラズマの加熱や粒子加速の問題では未解決な問題が多い。(p.46「X線観測で深まる銀河団中心部の謎」)


●活動銀河中心核[active galactic nucleus, AGN]
銀河のなかには中心のごく狭い領域で激しい活動性を示すものがあり,そのようなものを活動銀河中心核という。その活動性は多様性に富んでいるが,主な特徴としては,電波からガンマ線に至るまでの広いエネルギー範囲にわたる放射,幅の広い輝線放射,激しい時間変動などがあり,しばしば相対論的なプラズマジェットを伴う,活動のエネルギー源は,巨大ブラックホールへのガスの降着による重力エネルギーの解放であると現在ではほぼ信じられており,観測される多様性はブラックホールと降着円盤およびそれらを取り囲む分子トーラスを見こむ角度や,ジェットの有無などで説明される。その一方でエネルギー源となるガスの中心部への輸送やジェットの成因など未解決の問題も多い。(p.46「X線観測で深まる銀河団中心部の謎」)


●線張力[line tension]
細胞膜やシャボン玉における穴の縁や,膜面内の相分離などでは,1次元的な界面が生じる。この1次元界面の単位長さあたりのエネルギーを線張力とよぶ。結果的に線張力は力の次元をもつ。線張力が正であれば,その線は短くなろうとして,穴はふさがり,相分離のドメインは丸くなろうとする。単位面積あたりのエネルギーである表面張力と対比される。ただし,表面張力は力を長さで割った次元をもつ。(p.54「細胞膜が破れない理由」)


●熱電発電効率[efficiency of thermoelectric power generator]
固体の熱電効果を利用した発電の効率。他の熱機関の場合と同様に,得られた仕事を投入した熱量で割った量で定義される。本文中で登場する無次元性能指数ZTが無限大の極限で,カルノー効率(可逆な熱機関の効率)に一致する。(p.64「おもしろくて役に立つコバルト酸化物」)



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