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今月のキーワード
自己相似性 / 疎水性相互作用 / リビング重合/ クロダ効果 / BIPM / 原子炉ニュートリノ / 地球ニュートリノ / 縞枯れ現象 / ギャップ動態 / 種子生産の豊凶 / 花粉制約
●自己相似性[self-similarity]
スケールを変えても相似な図形,言い換えると,ズームイン・ズームアウトして見ても同じ構造に見えるパターンは,「自己相似である」という。「スケール不変」ともいう。無限に枝分かれするツリー構造などフラクタル図形はその自己相似性に特徴がある。準結晶の構造であるペンローズ格子もこの性質をもつ。(p.14「ニュートン的世界像とダーウィン的世界像の統合を目指して」)

●疎水性相互作用[hydrophobic interaction]
水を嫌う部位をもつ分子,すなわち疎水性分子,が水中で集合して安定化するさいの相互作用をいう。水中でのミセル形成,球状タンパク質の形成などにおいて重要な役割を果たしている。一般に,水分子同士は水素結合,双極子相互作用,分散力などにより強く引き合っており,疎水性分子が水分子間に割り込むのを妨げている。その結果,弱く相互作用しあう疎水性分子が集合すると考えられている。また,疎水性分子近傍の水分子の疎水性水和が原因とする考え方もある。(p.24「サイズのそろった高分子ミセルを瞬時につくる・並べる」)

●リビング重合[living polymerization]
高分子をつくる方法の一種で,モノマー(単量体)に開始剤を加えると,重合が一斉に開始し,同じ速度で副反応なく進行する重合反応のことをいう。重合終了後も生長末端が活性を保っていることからリビング重合とよばれているため, 構造や分子量が制御され,かつ分子量の分布が非常に狭いポリマーが得られる。また,活性末端をもっているため,1つめの重合終了後に,異なる種類のモノマーを加えることでブロックポリマーも容易に合成できる。(p.24「サイズのそろった高分子ミセルを瞬時につくる・並べる」)

●クロダ効果[Kuroda effect]
一般的にはクラマース‐クローニッヒの関係として表される性質であるが,万有引力定数を測定するさいに用いられるtime-of-swing法において,力をねじれ秤の周期に置き換えるさいに発生する誤差を生み出す効果。すなわち,ねじれ糸のばね定数は測定に必要な精度を保つことのできる精度で定数でなければならないが,このねじれ糸のばね定数が周期に依存してしまい定数ではなくなる。定数からのずれの相対的な大きさは,ねじれ糸内部の機械的損失に比例する。これを避けるには,ねじれ糸として振動の減衰が小さい性質の材料からつくられたものを用いる。タングステン線よりも溶融石英ファイバーの方がよい。(p.40「ニュートン重力定数測定の行方は?」)

●BIPM[Bureau International des Poids et Mesures]
1875年締結されたメートル条約により組織された国際度量衡委員会の指揮下におかれてパリのセーブルに設置された国際度量衡局(Bureau International des Poids et Mesures)を指す。国際原器の保管を任務とし,度量衡に関する研究などを行う。建物の正面玄関にマイケルソンが使用した歴史的な光干渉計が展示されている。ここで自由落下型の絶対重力加速度計の研究を退官まで20年以上続けた日本人研究者がいる。(p.40「ニュートン重力定数測定の行方は?」)

●原子炉ニュートリノ[reactor neutrino]
原子炉で発生し,放出されるニュートリノ。原子炉内部ではウランやプルトニウムが核分裂しエネルギーを生み出しているが,分裂後の原子核は中性子過剰でありエネルギー的に不安定な状態にある。このため分裂核に含まれる中性子はベータ崩壊して電子と反電子型ニュートリノを放出し,陽子に転換する。したがって原子炉ニュートリノは純粋に反電子型ニュートリノである。それを示すためとくに原子炉反ニュートリノ(reactor anti-neutrino)ともいう。(p.42「カムランド:ついにとらえた原子炉ニュートリノ欠損現象!」)

●地球ニュートリノ[terrestrial neutrino, あるいは geo-neutrino]
地球上に存在するウランやトリウムなどの天然の放射性原子核は一連のベータ崩壊を行い反電子型ニュートリノを放出する。これを地球ニュートリノあるいは地球反ニュートリノという。地球内部からは大量の熱が放出され,マントルの運動や,大陸移動,地震や火山活動の源となっている。その熱量のかなりの部分が上にあげた原子核のベータ崩壊で発生すると考えられているが明らかではない。したがって地球ニュートリノの検出は地球の謎に迫る新たな手段として期待されている。(p.42「カムランド:ついにとらえた原子炉ニュートリノ欠損現象!」)

●縞枯れ現象(森林のパターン)[wave regeneration]
林冠木が立ち枯れる部分が山の斜面に何本も帯のように並ぶパターンのこと。縞状パターンがつくられる原因は,山麓から山頂へ向かって吹く恒常風だといわれている。立ち枯れ帯のすぐ上に位置する樹木は樹高が高く恒常風の影響に強くさらされるのでしばらく経つと枯れてくるが,他の樹木は風の影響がそれほど強くないためにほぼ一定の速さで樹高を増す。その結果として,林全体の縞状パターンが一定速度で山頂に向かって進んでいく。(p.49「森林のパターンはどうしてできるか?」)

●ギャップ動態(森林のパターン)[gap dynamics]
高い樹木が優占する森林では,厚い林冠によって太陽光が遮られるためその林床は暗く幼樹の成長は抑制される。しかし倒木などにより林冠の欠落した場所では光条件が良く,多くの幼樹が育つことができる。このような場所は“ギャップ”とよばれ,森林の構成樹木の変遷や多様性に大きく影響しているとして注目を集めている。ギャップのサイズや密度の時空間的な変化はギャップ動態といわれ,森林生態学の中心テーマの1つとなっている。(p.49「森林のパターンはどうしてできるか?」)

●種子生産の豊凶[mast seeding/masting]
作物ではその年の収穫高を表すのに,豊作年や凶作年という言葉がよく使われる。種子を実らせる樹木でも同じように,種子の生産高に応じて豊作・凶作がみられ,これを種子生産の豊凶とよぶ。熱帯雨林に生息する樹木から温帯林のものまで,種子生産の豊凶は幅広い分類群で観察される。種子生産高の変動は,その種子をえさとするリスやネズミなどの個体数変動の誘起にはじまり,より上位の食物網を経由して,森林生態系全体にわたる波及効果をもたらすといわれる。(p.49「森林のパターンはどうしてできるか?」)

●花粉制約[pollen limitation]
花を咲かせて種子をつくることで子孫を残す種子植物では,胚珠の受精によって種子がつくられる。花粉制約とは,受精のための十分な花粉が得られずに,種子の生産が制約されること。受精のプロセスが正常に進むために別個体の花粉が必要である場合,それを自家不和合性とよぶが,花粉制約はこの自家不和合性の植物でとくに顕著にみられる。(p.49「森林のパターンはどうしてできるか?」)


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