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今月のキーワード
階層問題(ヒエラルキー問題)/コンパクト化/プロトコル/認証/プロキシー/原子核構造/アミノ酸配列の単純化/アミノ酸配列における冗長性/配列の情報エントロピー
●階層問題(ヒエラルキー問題)[hierarchy problem]
重力相互作用が他の3つの相互作用(電磁気的相互作用,弱い相互作用,強い相互作用)と比べて非常に弱いのはなぜかという問題。言い換えれば,重力の量子効果が顕著に現れるエネルギースケールであるプランク・スケール(〜1019GeV)(あるいは電弱強相互作用の結合定数が統一されるスケール(〜1016GeV))と電弱相互作用が顕著に現れるスケール(〜102GeV)が大きく離れているが,この階層構造をいかに自然に説明するかという問題ともいえる。(p.4「余次元空間に広がる新しい素粒子物理」)

●コンパクト化[compactification]
高次元空間の理論を考え,われわれが住んでいる4次元時空間以外の余分な空間をコンパクトに丸めることをコンパクト化という。高次元空間の理論を考えるのは,たとえば超弦理論は10次元でのみ矛盾なく定式化できるなど,その必然性があるからである。コンパクト化された空間のもつ対称性は,われわれの住む4次元時空間では内部対称性とみなされ,ゲージ対称性の起源となる。またコンパクト空間でのトポロジカルな構造が4次元時空上でのカイラルフェルミオンを与える。(p.4「余次元空間に広がる新しい素粒子物理」)

●プロトコル[protocol]
異なる装置やコンピューターの間でデータ通信を行うのに必要な取り決め。通信規約ともいう。データのフォーマットや光ケーブルで用いる光の波長など,ソフトウェアやハードウェアのさまざまな条件を取り決めることである。(p.13「グリッド構想がげ奮悗里燭瓩凌靴靴ぅ灰鵐團紂璽拭璽ぅ鵐侫蕁廖

●認証[authentication]
コンピューターネットワークなどで,特定の情報へのアクセスを要求されたとき,その要求元あるいは個人を識別・検証すること。(p.13「グリッド構想がげ奮悗里燭瓩凌靴靴ぅ灰鵐團紂璽拭璽ぅ鵐侫蕁廖

●プロキシー[proxy]
一般に「代理」のこと。たとえば,ユーザが一度アクセスしたホームページのデータを一時的に蓄え,次に同じページにアクセスするときにもとのWWWサーバーに代わってデータを提供することでWWWアクセスを効率化してくれるローカルなサーバーを,プロキシーサーバーとよぶ。(p.13「グリッド構想がげ奮悗里燭瓩凌靴靴ぅ灰鵐團紂璽拭璽ぅ鵐侫蕁廖

●原子核構造[nuclear structure]
原子核は,第一義的には,陽子と中性子が強い相互作用によって結び付いた系と見なすことができるが,力を媒介する中間子も重要な役割を果たしており,複雑な多体系である。その構造の研究は,256個の安定な原子核の他に数千個といわれる有限の寿命をもつ原子核を対象として行われ,近年の新たな発見から基本的な問題提起もなされている。また,原子核にとって,室温(約300 K)は無視できる温度であり,極低温(温度ゼロ)での性質が現れ,量子効果が直接的にその構造・反応に影響する。核超伝導性や陽子崩壊を引き起こすトンネル効果などはその例である。(p.36「新種の放射能を発見:2陽子放射」)

●アミノ酸配列の単純化[simplified amino acid sequences]
タンパク質の構造や機能発現のみを考えると,わずか10種類程度で構成されるアミノ酸配列でも,自然界に存在するタンパク質と同じ構造を形成し,同程度の機能を発現できることが最近の研究で明らかにされている。このように,構造や機能を保ったまま天然配列を簡単な配列に人工的に再設計する作業をアミノ酸配列の単純化という。アミノ酸配列を単純化する研究の目的の一つは,タンパク質の構造がどのように形成されるかを理解するためのモデル分子の作成である。(p.57「単純化したアミノ酸配列でタンパク質の折りたたみを調べる」)

●アミノ酸配列における冗長性[information redundancy in amino acid sequences]
類似アミノ酸配列の解析から,複数のアミノ酸配列が同じ構造を形成すること,すなわち,一配列に一構造が対応するわけではないということは,以前からよく知られている。さらに最近では,全く異なるアミノ酸配列でも同じ構造を形成し得ることが明らかになっている。この結果を,タンパク質の(仮想的な)配列空間と構造空間を用いて体系化すると,両空間を関連づける関数は多くの冗長性を含むことになる。(p.57「単純化したアミノ酸配列でタンパク質の折りたたみを調べる」)

●配列の情報エントロピー[sequence entropy]
自然界に存在するタンパク質の配列は一般的に20種類のアミノ酸から構成されている。これらのアミノ酸配列によって,各々のタンパク質の形と機能が決定される。このアミノ酸配列に含まれる情報量は,情報学で用いられるシャノンの情報エントロピーを用いて数値化することができる。このように情報量を数値化すると,自然界に存在するタンパク質の配列の情報エントロピーはあるしきい値より大きいことが最近の研究で明らかになった。そして,そのしきい値よりエントロピーが小さい配列は,機能を発現するために必要な構造を自ら形成することができないのではないかと考えられている。(p.57「単純化したアミノ酸配列でタンパク質の折りたたみを調べる」)


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