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今月のキーワード
電波音波共用測定装置(RASS)/音波重力波/異常磁気モーメント/磁束量子/マグナス力/核四重極共鳴,核磁気共鳴/蛍光X線 /共鳴散乱での位相変化/eg軌道,t2g軌道/モット絶縁体

電波音波共用測定装置[radio acoustic sounding system;RASS]
地上から上空の気温の鉛直分布を測定するために,速度を測定できるドップラーレーダーと音の発射装置を組み合せたシステム。地上から発射された音波は大気屈折率を変動させて,波長がブラッグ条件を満たすと電波は大気により反射される。音速が気温の平方根に比例することを利用すると,レーダーで測定された各高度の音速から気温の鉛直分布が測定できる。連続して気温が得られる利点から,大気リモートセンシングの有力な手段として注目され,実用化も進みつつある。(p.13「注目される大気の超低周波音」)


音波重力波[acoustic-gravity wave]
音波は空気の圧縮膨張による気圧を復元力に,重力波は大気成層による浮力を復元力にした波動であるが,音波重力波はその両者の性質をもつ波動である。周波数から考えると周期1分から5分程度の超低周波の音波,超高周波の重力波と位置づけられる。通常の音波は,周波数によらず速度一定で等方的に伝わるが,大気成層による影響を受けた音波重力波は,速度が周波数に依存し,非等方的に伝わる。(p.13「注目される大気の超低周波音」)

異常磁気モーメント[anomalous magnetic moment]
粒子は単独で質量・電荷と同様,スピンによる双極子磁場をもつ。ディラックの相対論的量子力学ではスピン1/2の荷電素粒子の磁気モーメントはm0=g・mB・l =2・mB・(1/2)であり,g=2である。ここでmBはボーア磁子,lは角運動量(スピン),gは補正因子。驚くべきことに,電子の磁気モーメント精密測定の結果gが2からずれることが判明し,そのずれが異常磁気モーメントとよばれるようになった。現在,異常磁気モーメントはくりこみ理論で非常によく説明される。(p.38「標準理論にほころびか,ミューオン異常磁気モーメント」)

磁束量子[quantized vortex, flux quantum]
第二種超伝導体に磁場をかけると,ある磁場以上で磁束を内部に取り込む。磁束は電流の渦の形で試料内部に侵入し渦に捕獲される磁束はとびとびの値(F0=hc/2e=2.07×10−7Oecm2)に量子化される。ここでhはプランク定数,cは光速,eは単位電荷である。このような磁束量子は通常三角格子を組んで配列する。(p.40「電荷をため込む高温超伝導の渦」)

マグナス力[Magnus force]
軸を中心に回転する円柱の軸に垂直に流体が当たるときに円柱が受ける力でベルヌーイの定理により説明される。その方向は流体の流れる方向と軸方向の両方に垂直である。通常の流体や超伝導体,超流動体の渦はマグナス力を受けて運動する。(p.40「電荷をため込む高温超伝導の渦」)

核四重極共鳴/核磁気共鳴
[nuclear quadrupole resonance: NQR, nuclear magnetic resonance: NMR]

静磁場中におかれた原子核はゼーマン効果により核スピンのエネルギー準位が分裂する。このエネルギー差に対応する周波数の電磁波を与えると電磁波の吸収が起こる(核磁気共鳴,NMR)。核スピンが1以上の原子核は電気四重極モーメントをもつ。核の位置に電場勾配があると電気四重極相互作用により核スピンのエネルギー準位は分裂し,ゼロ磁場でも電磁波の吸収が起こる(核四重極共鳴,NQR)。(p.40「電荷をため込む高温超伝導の渦」)

蛍光X線 [fluorescent x-rays]
物質をX線で照射すると,内殻電子を励起して物質原子をイオン化する。イオン化された原子の空いた内殻準位に,高いエネルギー状態にある電子が落ち込むと,特性X線を生ずる。この過程によって放出される特性X線を,蛍光X線という。蛍光X線は原子の種類によって定まるエネルギーをもつため,エネルギー分解能をもつ半導体検出器などを用いることによって,他の散乱X線と分離した計測が可能である。(p.43「X線やg線ホログラフィで見る固体中の原子」)

共鳴散乱での位相変化[phase shift in resonant scattering]
一般に,共鳴散乱での散乱振幅は,入射光のエネルギーをE,共鳴エネルギーをEl,共鳴幅をGlとして,
に比例する。共鳴幅Glが非常に小さいメスバウアー共鳴散乱では,入射光のエネルギーEをElの前後でわずかに変化させることで,実質的にはエネルギーをほとんど一定に保ったままで,散乱光子の位相を変化させることができる。(p.43「X線やg線ホログラフィで見る固体中の原子」)


eg軌道,t2g軌道[egorbital, t2gorbital]
孤立原子のd軌道は5重に縮退しているが,立方対称なポテンシャルの中では2重縮退のeg軌道と3重縮退のt2g軌道に分裂する。これらの軌道は波動関数の広がりに強い異方性をもつため,電子がどの軌道状態をとるかで近接するサイトとの相互作用が大きくことなってくる。これが遷移金属化合物の多彩な物性の一因となっている。(p.52「強相関オプトエレクトロニクス」)

モット絶縁体[Mott insulator]
バンド理論によると単位胞あたりの電子数が奇数の場合には物質は金属となる。しかし3d電子軌道のようにバンド幅に比べて電子間のクーロン斥力が大きい場合には,伝導電子が各原子上で局在することにより電子数によらず絶縁体となる場合がある。このような絶縁体をモット絶縁体といい,多くの遷移金属化合物にみられる。(p.52「強相関オプトエレクトロニクス」)


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