*1 MITはマサチューセッツ工科大学(Massachusetts Institute of Technology),NISTはアメリカの国立標準技術研究所(National Institute of Standards and Technology)のこと。

*2 冷却原子集団に対して,その共鳴付近の周波数をもつレーザー光を当てると,原子の存在する場所で吸収が起こる。拡大したレーザー光を原子集団に通した後,CCD上に照射すると原子集団の2次元の画像が得られる。

*3 凝縮体の干渉を観察するために,MITでは2つの凝縮体を同時に上から落としてこれらが重なり合ったとき,下からレーザー光を当ててその吸収の度合いをイメージ(像)として見た。像は小さな電荷結合素子(CCD)を並べた(アレイ)もので検出するので,その細かさが分解能に影響する。

*4 「原子線ホログラフィー」(本誌38ページ)参照。

*5 トラップを切って原子集団をしばらく自由落下させた後に観測光を当てて原子の分布を見ることで,落下前の原子の状態を調べる方法。くわしくは,「レーザー冷却されたボース‐アインシュタイン凝縮が開く新しい世界」(本誌18ページ)を参照。また,〈図2〉,〈図3〉も参照。

*6 Joint Institute for Laboratory Astrophysics の略。NIST,コロラド大学を中心とする共同研究所。

*7 メタステーブルについては,「水素原子の陰と陽」(本誌28ページ)を参照。

*8 光糖蜜。ドップラー冷却される原子集団には,周囲から照射されるレーザー光は粘性をもった流体のように見えることからこのようによばれる。くわしくは,「レーザー冷却されたボース-アインシュタイン凝縮が開く新しい世界」(本誌18ページ)を参照。

*9 磁気光学トラップ。冷却された原子集団は放っておくと重力によって下に落ちてしまうため,磁場と偏光を用いてこれを空中に保持する。くわしくは,「レーザー冷却されたボース-アインシュタイン凝縮が開く新しい世界」(本誌18ページ)を参照。

*10 ドップラー冷却では,原子の共鳴する光よりもわずかに周波数の低いレーザー光を使用するが,原子の電子準位に,電子スピンと原子核スピンとの相互作用によって超微細構造があると,共鳴する周波数が非常に近いところに超微細分裂だけ存在することになる。単純には,その分裂の数だけレーザー光を用意する必要が生じる。

*11 ポッケルス効果やカー効果など,電圧によって屈折率が変化する効果を使って,電気信号によって光に変調をかけるための素子。

*12 音響光学素子。音波による格子の変調を回折格子に使って,機械的振動を光の変調に変える素子。

*13 先に述べた超微細構造などによって共鳴エネルギーの近い準位があると,ドップラー冷却の際に本来励起させたい準位以外の準位に励起されてしまう原子が出てくる。これを周波数の異なるレーザー光で,本来励起したい準位にポンプしなおす(re‐pump)場合,リパンパーという。MITのようにレーザー光に変調をかけると実効的に変調周波数だけずれたレーザー光が混じった状態ができるので,リパンパーの代用をさせることができる。

*14 BECを光で散乱した時に現れる物質波増幅に関する実験。散乱する光の偏光の向きによって,散乱後のBECがきれいな格子状になる。(S. Inouye et al. Science 285, 571(1999).)座談会の時点ではまだ論文が出版されていなかったため,残念ながら今回の特集では解説できなかった。座談会の出演者は学会で井上氏の話を聞いたばかり。

*15 ボース粒子が1つの量子状態に入りお互いに位相をそろえようとするBECの原動力ともいえる現象。何らかの原因により一部の原子の波動関数があるパターンを形成すると,他も次々とそのパターンに入り込もうとする。

*16 ここでは,葉巻型のBECの長手方向の長さと葉巻の径の比をさす。

*17 ドップラー冷却し,MOTに補足した原子集団をBEC状態にするには,通常磁場のみを使ったトラップ(磁気トラップ)に捉えなおす。大きく分けて,直流磁場で葉巻状のトラップを作る方法と振動磁場を用いて球形に近いトラップを作る方法の2つがある。

*18 最近MITで開発された,外部磁場を使わず,光のもつ電場を使用してBECを閉じ込める方法。光を使うものの,直接の散乱を使うわけではないので加熱は無視でき,むしろ位相空間密度を稼ぐことができる。また,磁場を使わないためスピン自由度のあるBECの実験が可能になる。くわしくは,「スピン自由度とBEC」(本誌51ページ)を参照。また,〈図5〉も参照のこと。

*19 内部構造をもつ粒子の衝突で,一時的に粒子が複合した共鳴状態を経て散乱される現象。スピン自由度のある系では,磁場によるこの共鳴状態のエネルギーのシフトが,スピンによって,異なる様子を見ることができる可能性がある。

*20 これもMITで行われた,BEC中を音波が伝播する様子を捉えた実験。

*21 くわしくは,「スピン自由度とBEC」(本誌51ページ)を参照。

*22 観測光を当てたとき,その原子集団がどの程度光を吸収するかを光学密度(optical density)とよぶ。ボース凝縮した集団は空間密度が高くなっており,光学密度が高い。

*23 すり鉢の底を玉がぐるぐると回るように,ボース凝縮体が凝縮したままポテンシャルの底で運動を起こすこと。

*24 冷却されたNe原子ビーム中の2粒子の相関(g(2))を初めて実験的に調べた有名な仕事。後の井上氏の話に出てくる論文は,Masami Yasuda and Fujio Shimizu, Phys. Rev. Lett. 77, 3090(1996)。論文中には“70時間積算した”とある。

*25 くわしくは,「原子波レーザー」(本誌45ページ)を参照。

*26 この実験では,レーザーと磁場とで閉じ込めた(MOT)準安定なNe原子集団に別のレーザービームを当てて励起状態とすることで,トラップから原子を取り出して重力で落としている。

*27 ボース凝縮体が超流体になっていれば,条件により,凝縮体の中に渦が発生した状態が準安定な状態となる。この渦が通常の流体にできる渦と著しく異なる点は,流体全体がひとつの波動関数のようにふるまうので,渦全体が巨大な原子のようになり,その角運動量がプランク定数hを単位としてとびとびの値に量子化することである。液体ヘリウムでは実際にこれが観測され,超伝導体でもリングや渦糸を貫く磁束の量子化としてこれが現れる。

*28 くわしくは,「ストロンチウム原子のレーザー冷却とその応用」(本誌32ページ)を参照。

*29 くわしくは,「原子線ホログラフィー」(本誌38ページ)を参照。

*30 アハラノフとキャッシャーが予言したアハラノフ‐ボーム効果に双対な現象。「スピンのような磁気能率をもった粒子が静電ポテンシャルの中を通ると,それによって量子力学的な位相が変化する」というもの。