放射線リスク radiation risk <原子力・放射線>

放射線の健康影響は,
・ 皮膚障害,脱毛,不妊といったしきい線量のある組織反応(確定的影響)
・ しきい線量がないと仮定されているがんと遺伝的影響(確率的影響)
に分けられる.100 mSv以下の低線量ではがんと遺伝的影響が問題となることから,実際上,放射線リスクとはがんと遺伝的影響の発症確率(死亡確率)を指す.
 100 mSv以下では,広島および長崎の原爆被爆生存者を対象とした50年以上にわたる疫学調査からでも,過剰ながんや遺伝的影響の増加は観察されていない.しかし,微量な放射線でもDNA損傷を誘発する能力をもつことや,疫学的な線量と反応の関係の傾向などから判断して,100 mSv以下の線量でもリスクが存在すると考え,放射線防護の方策がとられている.
 100 mSvの線量を30歳の男性が被ばくしたときには,がんの過剰生涯死亡確率は0.9%であり,被ばくしないときの25%が25.9%(= 0.9+25)に増加するということが,原爆被爆生存者のデータから示されている.
[甲斐 倫明]



(出典:日本リスク研究学会 編『リスク学用語小辞典』,2008)

ここに掲載した用語解説は,2008年1月に丸善(株)から出版された,
日本リスク研究学会編『リスク学用語小辞典』より抜粋したものです。
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