宗教学事典

星野 英紀・池上 良正・氣多 雅子・島薗  進・鶴岡 賀雄[編]
発行:丸善株式会社

A5判・700頁/本体価格20,000円
ISBN 978-4-621-08255-3
世界的水準をふまえ、現代宗教学の成果と課題を提示すべく新たな枠組の構成を目指した中項目事典。執筆者総勢220名!本格的事典としては37年ぶりの刊行。

全体を10の分野に分け、現代の宗教学の全貌が見渡せるテーマを厳選。従来の宗教学の基幹概念や方法を改めて整理し、今後の方向性を考察。各項目とも2p、4pまたは6pの中項目主義で、初学者や周辺分野の研究者にも役立つ内容。


西欧的価値観の相対化、アジアの発展、イスラム世界の台頭……
大変革期のなか、宗教学は、いま、いかなる成果を有し、いかなる問題を抱え、将来展望はいかなるものか?
宗教学の全体像が見渡せる中項目事典。

日本を代表する宗教学者たちが編集する「中項目事典」。
現代の宗教学の最先端をリードする、錚々たるメンバー総勢220名が執筆に参加。
中項目の総数は約250、巻末索引は約2000語(欧文併記)。
各項目とも2、4頁または6頁の見開きレイアウトで構成、「読む事典」「読み通せる事典」。
初学者や周辺分野研究者にも役立つ内容。

刊行にあたって

 宗教学は19世紀の西洋で形をなした学問です。キリスト教の教義研究をする神学が主であったそれまでの宗教研究に対して、比較を方法として諸宗教をさまざまな角度から研究する宗教学が誕生したことは、フレッシュなインパクトを与えました。
 それからほぼ1世紀半が経過した現在、西欧的ディシプリンとして確立してきた宗教学は、さまざまな深刻な問題に直面することになっています。その背景には西欧的価値観の相対化、アジアの発展、イスラム世界の目覚ましい台頭などがあります。さらには情報化、グローバル化といった地球大での技術革新や政治・経済の変容にも当然大きな影響を受けています。
 このような大変革期のなかで、宗教学は、いま、いかなる位置にあるのか、いかなる成果を有しているのか、いかなる問題を抱えているのか、そしてその将来的展望はいかなるものか、などの諸点を正しく把握することは、今後の宗教研究のあり方全体にきわめて重要な意義があると考えています。
 そこでこのたび『宗教学事典』を刊行することにしました。先行する事典としては1973年刊行の東京大学出版会『宗教学辞典』がありますが、すでに37年を経ている上に上記のような展開もあり、このたびの出版は十分な意義があるものと考える次第です。
 本書出版の目的をより具体的にいえば、大きく分けてふたつあります。ひとつは、従来の宗教学の基幹概念や方法がいま真正面より再検討の必要に迫られていることを踏まえ、それらを改めて整理し、今後の方向性を考察することであります。現在、「宗教」という概念そのものの再検討の必要性が西欧および非西欧の宗教研究者たちから指摘されています。また、〈宗教的なるもの〉ものがカバーする領域もますます拡散化していることも確かです。
 加えて、人間を研究する諸学問自体が、従来の領域を超えて変容していることも宗教学に見逃すことのできないインパクトを与えています。その結果、宗教学と隣接学との関係は大きな変動を見せています。越境や脱領域化が進むにつれて、従来から宗教学とよばれてきた領域の再考を求める声も高まって来ています。本事典はこうした気運に応じつつ、学としての宗教学をめぐる数々の諸問題を整理し、過去の学的遺産を批判的に継承しつつ、新たな状況を見通すことをめざしています。
 いまひとつの目的は、個々の宗教現象や研究テーマに関する過去150年間にわたる宗教学の研究成果を明らかにすることです。申すまでもなく、研究成果は着実に蓄積されてきました。たとえば一神教という概念およびその働きは、もちろん19世紀において達成された研究結果と現在のそれとでは質量ともに大きな違いをみせていますが、依然として宗教類型としての一神教という概念は、宗教比較の営みに欠くことはできないものです。このように、宗教学のいままで研究成果の豊富な蓄積を余すところなく明らかにすることも宗教学の責任であり、また隣接諸科学の発展、社会への貢献に寄与するものとなるはずであります。
 本事典は新しい現象や問題領域にも少なからぬ注意を払っています。宗教学の専門用語に関しても過去数十年間で新たなものが相当数加わっていますし、また重要性が格段に増した用語もありますし、またそれが減じたものもあります。これらの動向を明らかにすることで、宗教学的営みの豊かな業績を明示しようとしております。さらに科学文明の発達の結果、環境、医療などのように、ここ数十年の間に人間の生活と未来に関して著しく重要度の増した領域があり、それらは宗教学との関連が非常に深いテーマも少なくありません。これらについては、人間のあり方に深く関わる宗教を研究してきた宗教学こそが、その豊かな研究成果と視点に基づいて、みずからの立場や意見を明らかにする必要と責任があると考えています。
 幸い、日本には歴史的に見て多くの宗教伝統が伝来し、それらが多角的に日本人の宗教観、宗教生活を形成してきました。日本の宗教学はそのような多宗教状況を背景に、さまざまな特色あるアプローチを持っています。この特質を生かしつつ日本の宗教学者が、以上のような目標を掲げて『宗教学事典』を世に問い、最上で最新の情報を発信することはきわめて意義深いことであると確信しています。
2010年7月

星野 英紀


編集委員一覧

星野 英紀 (ほしの・えいき) 大正大学文学部人文学科教授
池上 良正 (いけがみ・よしまさ) 駒澤大学総合教育研究部教授
氣多 雅子 (けた・まさこ) 京都大学大学院文学研究科教授
島薗  進 (しまぞの・すすむ) 東京大学大学院人文社会系研究科教授
鶴岡 賀雄 (つるおか・よしお) 東京大学大学院人文社会系研究科教授


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