応用倫理学事典

編集代表 加藤尚武(京都大学名誉教授)
上製箱入・A5判・1,100頁
本体価格20,000円  
ISBN 978-4-621-07922-5 C3512
社会にコミットする倫理学の全貌が見渡せる本邦初の一大成書。さまざまな身の回りのキーワードについて、「哲学・倫理学概念」を援用しながら、各分野を代表する編集委員、執筆者が懇切丁寧に興味深く解説する。

本邦初! 応用倫理学の全貌が見渡せる中項目事典
ネット検索では読めない、第一線研究者による興味深い解説
見出し語(中項目)数:約460項目
筆者数総勢:約200名
和文索引:約3000語収録(和文に対応した欧文も併記)

応用倫理学事典・編集委員一覧
編集代表
加藤 尚武  京都大学名誉教授、日本哲学会前委員長

編集委員(五十音順)
赤林  朗  東京大学 大学院 医学系研究科
伊藤 道哉  東北大学 大学院 医学系研究科
梅津 光弘  慶應義塾大学 商学部
遠藤  徹  聖心女子大学 キリスト教文化研究所
岡本 三夫  広島修道大学名誉教授
越智  貢  広島大学 大学院 文学研究科
鬼頭 秀一  東京大学 大学院 新領域創成科学研究科
小出 泰士  芝浦工業大学 工学部
児玉  聡  東京大学 大学院 医学系研究科
澤田 愛子  日本赤十字北海道看護大学 看護学部
関根 清三  東京大学 大学院 人文社会系研究科
直江 清隆  東北大学 大学院 文学研究科
長島  正  上智大学 文学部
林  芳紀  東京大学 大学院 医学系研究科
久繁 哲徳  カナダ医療経済研究所
藤井 正雄  大正大学名誉教授
本田 裕志  龍谷大学 文学部
松川 俊夫  山形短期大学 人間福祉学科
丸山 徳次  龍谷大学 文学部
水谷 雅彦  京都大学大学院 文学研究科
宮坂 純一  奈良産業大学 ビジネス学部
山脇 直司  東京大学 大学院 総合文化研究科

刊行にあたって(抜粋)
 「応用倫理学とは、どういう原理を応用したものなのですか」と聞かれることがあるが、「特定の原理を適用した倫理学の領域ではない」というのが真相である。ともかく実際の生活で登場してきた問題を取り上げて倫理基準を作ったり、倫理学的に分析したりする領域を、「応用倫理学」と呼んでいる。特定の原理を応用したわけではないので、「応用倫理学」という言葉は不適切だと、主張する人もいる。そういう理由で「実際的倫理学」(Practical Ethics)という言葉を使う人もいる。
 「応用光学」と言えば、レンズの屈折の法則などを原理として、眼鏡、望遠鏡などの作り方を明らかにする学問である。「応用物理学」とか「応用化学」とかいう学問では、原理と応用との関係が、かなりはっきりしている。ところが、どういう原理が確立されているのか分からなくても「応用」という言葉を使うことがある。「応用倫理学」も、原理が分からなくても、とりあえず現実的な問題のなかに潜む倫理問題を取り上げるという態度で、「生命倫理学」(Bioethics)、「環境倫理学」(Environmental Ethics)、「企業倫理学」(Business Ethics)などが、20世紀の後半に開発されてきた。
 20世紀の後半、政治的には民主主義、経済的には市場経済、法律的には個人の所有権と人権の擁護という特質をもつ社会が、安定して成長できることを多くの人が期待したが、意外に、それが困難であることが明らかになった。日常生活の中に登場する、新しい技術だけでも、人類の歴史が積み重ねてきた倫理・道徳の枠を越えてしまう。多くの人に豊かさの恩恵をもたらした大量生産技術が、地球の大気圏にCO2という廃棄物を累積させて、地球の気象を不安定にしつつある。20世紀後半の先進国の繁栄をささえたエネルギー資源は、有限であって、日々、枯渇に向かって接近している。
 本書は、応用倫理学の生きた姿をそっくり取り込むことを目指した。応用倫理学の各領域は、それぞれ独自に理論的な開発が進んできたものであって、相互に対立する面も含んでいる。たとえば生命倫理学には個人の自由・自己決定・幸福追求権を尊重しようとする個人主義の傾向が強い。他方、環境倫理学は地球全体の生態系に対して責任を確立しようとする「宇宙船地球号の倫理」という特色がある。また家族倫理の領域では、母と子の関係をあらゆる時代に共通な人間性の原理と見なそうとする傾向があるのに対して、フェミニズムの倫理には、母に負わされる社会的な役割を歴史的に作られてきたものとみなす傾向がある。こうした傾向の違いを調整したり、統一化したりすれば、応用倫理学の現在の生きた姿を伝えることはできなくなる。そこで本書の編集に際して、領域ごとの編集委員を定めて、項目や執筆者の選定を一任することにして、全体としての調整は同一項目の重複を避けるという程度の最小限のものとした。
2007年12月 加藤尚武

目   次
1.生命倫理・医療倫理
・人工妊娠中絶
・事前指示
・エイズ
・動物実験
・自 律
・脳 死
・倫理綱領
・精神病の強制医療
・利益相反
・安楽死
・胎児を用いた研究
・遺伝子治療
・遺伝カウンセリング
・遺伝子スクリーニング
・ゲノム解析
・インフォームド・コンセント
・医の倫理の歴史
・医学的無益性
・精神障害の概念
・臓器移植とドナー
・緩和ケア
・パターナリズム
・患者の権利
・プラセボを用いた治療
・予防医学
・クオリティー・オブ・ライフ
・すべり坂論法
・真実告知
・生殖補助医療
・クローニング
・尊厳死
・ES細胞
・HIPPA法と個人情報の保護に関する法律
・代理懐胎
・IRB倫理委員会
・医療過誤、医療事故
・無作為割付試験
・リスクマネジメント
・トリアージ
・体性幹細胞
・生命維持治療の差し控えと中止
・守秘義務
・疫学研究の倫理
・生体臓器移植
・エンハンスメント

2.情報倫理・マスコミ倫理
・プライバシー
・監視社会
・知的財産権
・表現の自由
・フリーソフトウェア運動
・コンピュータ倫理学
・憎悪表現
・遺伝情報
・「不正」アクセス
・電子民主主義
・「有害」情報
・電子商取引
・インターネット
・内部告発
・ネチケット
・コード
・ファイル共有
・マスコミ倫理
・サイバー犯罪条約

3.環境倫理
・環境倫理学
・人間中心主義と人間非中心主義
・救命艇倫理と宇宙船倫理
・保全と保存
・土地倫理
・ディープ・エコロジー
・動物解放論
・共有地(コモンズ)の悲劇
・エコフェミニズム
・ソーシャル・エコロジー
・公害と環境問題
・環境権
・責任倫理と未来倫理
・世代間倫理
・環境正義
・環境プラグマティズム
・共 生
・景観問題
・環境リスク論
・拡大生産者責任
・環境影響評価
・生物多様性
・自然の権利訴訟
・宗教の環境思想
・人口爆発
・持続可能
・循環型社会
・里山の環境倫理
・ダイオキシン問題
・地球温暖化問題と京都議定書
・原子力施設の事故、チェルノブイリ事故
・原子力利用が生む核のごみ
・農薬と化学薬品
・廃棄物問題
・水俣病
・食品公害
・野生動物問題   
・予防原則
・湿地保全とラムサール条約

4.看護倫理
・看護の価値
・看護職と社会的評価
・看護師像
・看護職と性差別
・ナーシング・アドボカシー
・看護職と倫理綱領
・看護職者の連帯
・看護実践における倫理的ジレンマ
・看護実践と意思決定
・看護職と忠誠
・医療過誤と看護
・看護職の能力向上
・看護と宗教
・ケアリングの倫理
・看護とウェルビーイング
・戦争と看護職
・ナチズムと看護職
・看護研究の倫理

5.技術倫理・工業倫理
・予防原則とリスク
・APECエンジニア
・技術士
・日本技術者教育認定機構(JABEE)
・技術者と公衆
・技術者倫理規定と学協会
・技術専門職としてのアイデンティティ
・技術と社会
・技術者の責任と倫理
・国際的倫理基準
・業務上の人間関係
・製造物責任
・説明責任
・工業所有権
・ヒューマンエラー
・被用者の権利と義務
・費用-便益分析
・モラル問題
・ユニバーサルデザイン
・利害関係の相反

6.科学倫理
・科学倫理/研究倫理
・職業としての科学者
・捏造と改竄
・オーサーシップ
・クレジットと盗用
・発明権・著作権と公有性
・ソーカル事件
・疑似科学
・優生学
・臨床試験と被験者の保護
・心理学実験と被験者の同意
・社会調査と被験者の同意
・研究評価
・研究資金
・巨大科学
・原子力と科学技術文明
・遺伝子組み換え作物
・BSEとリスク評価
・アクターネットワークと集団責任
・科学技術コミュニケーション
・科学者の社会的責任

7.企業倫理・経営倫理
・道徳的主体としての現代企業
・企業不祥事
・コンプライアンス
・ヴァリュー・シェアリング
・SOX法
・連邦量刑ガイドライン
・インテグリティ
・専門職の倫理
・ステイクホルダー
・CSR
・企業統治
・株主主権の陥穽
・競争の倫理
・倫理的調達
・終身雇用と任意雇用
・広告の倫理
・コミュニティ・ビジネス
・環境報告書
・企業市民
・経営者の受託義務
・総会屋・過労死(日本的企業の倫理の課題事項)
・ビジネス倫理の制度化
・防衛産業イニシアティブ
・倫理綱領
・相談窓口/ヘルプライン/ホットライン
・ モニタリング
・社会的規制
・社会的責任投資
・レピュテーション/レピュテーション・リスク
・ケース・メソッド
・企業倫理と企業社会責任論

8.宗教倫理
・絶対者
・信 仰
・希 望
・愛
・畏 敬
・祈 り
・神秘主義
・罪と悪
・来 世
・終末論
・応 報
・貧しさ
・禁 欲
・儀 礼
・犠 牲
・宣 教
・宗教教育
・原理主義
・宗教批判

9.教育倫理
・道徳教育
・教師の倫理
・大学の倫理
・青少年問題
・ジェンダーと教育
・教科書
・体 罰
・成人の学習
・学 力
・新自由主義と教育政策
・義務教育
・教育基本法
・指導と放任
・人権教育
・教育の言説
・代理責任

10.公共性・公共政策の倫理
・公共性
・公共哲学
・正 義
・人 権
・民主主義
・公共精神
・憲法と憲政・憲法政治
・選挙と倫理
・市 場
・公共政策における価値判断
・効率と公正
・ケイパビリティ・アプローチ
・ネオ・リベラリズムと第三の道
・ソーシャル・インクルージョン
・ソーシャル・ガバナンス
・ソーシャルキャピタル
・市民社会
・NPO・NGOとアドヴォカシー
・アカウンタビリティ
・公会計
・NPM(新公共経営)
・公務員の倫理
・年金問題
・シティズンシップ
・多文化主義
・移民政策
・言語政策
・アファーマティブ・アクション
・プライバシー権
・国家刑罰と死刑
・私的所有権
・公共財・地球的公共財
・開発・発展
・人間の安全保障

11.平和・国際関係の倫理
・侵 略
・有事法制
・文民統制
・テ ロ
・核兵器と非核兵器地帯
・包括的核実験禁止条約
・国際刑事裁判所と
戦時国際法
・核不拡散条約
・非核三原則
・兵器移転
・未臨界核実験
・劣化ウラン弾
・ノーベル平和賞
・軍需産業と軍産複合体
・悪の枢軸
・社会ダーウィニズム
・平和文化
・ゲームの理論と囚人のジレンマ
・第三世界の貧困
・南北問題
・軍国主義
・平和運動
・加害と被害
・戦争犯罪
・世界政府
・構造的暴力
・文化的暴力
・良心的兵役拒否
・民族解放
・大量虐殺
・市民的防衛
・平和外交
・軍事基地
・平和博物館
・平和教育
・国連軍
・対人地雷禁止条約
・「世界人権宣言」と人権侵害への国際的対応
・国際司法裁判所
・平和条約
・信頼醸成措置
・宗教と平和
・生物・化学兵器
・平和市長会議
・傭 兵
・帝国主義
・エスニシティ
・武器輸出三原則

12.社会福祉倫理
・社会福祉の倫理
・社会福祉の倫理の展開
・倫理規約
・根拠に基づく社会福祉
・権利と契約
・パターナリズム
・自己決定
・自立支援
・エンパワーメント
・プライバシー
・ニーズ
・生活の質
・質の保証
・保健・医療・福祉の統合
・障害者の権利
・ケア・マネジメント
・ノーマライゼーション
・バリアフリーとユニバーサルデザイン
・高齢者差別
・予防の倫理
・福祉国家
・セイフティネット
・医療の財政
・ワークフェア
・ベーシック・インカム

13.映像倫理
・光刺激性発作
・映倫とレーティング
・ヘイズ・コード
・放送コード及びVチップ
・暴力描写
・ポルノとフェミニズム
・猟奇映像
・わいせつ映像
・ドキュメンタリー映像
・文芸作品の映像化
・戦争報道映像
・低俗番組
・やらせ

14.生と死の倫理
・仏教の死生観
・キリスト教の死生観
・ユダヤ教の死生観
・イスラム教の死生観
・日本人の死生観
・仏教の他界観
・キリスト教の他界観
・ユダヤ教の他界観
・イスラム教の他界観
・日本人の他界観
・祖先崇拝
・先祖と祖先
・境界領域
・追 善
・慈悲と愛
・臓器移植
・ホスピスとビハーラ
・ターミナルケア
・臨死体験
・死の文化装置
・葬墓・葬墓制
・逆 修
・正月と盆

15.性と結婚の倫理
・性と結婚の倫理
・性人格論
・一夫一婦制
・売春・買春
・不 倫
・婚前交渉
・婚外交渉
・中 絶
・自 慰
・道徳的認知と自慰
・性教育
・性的虐待
・勃起障害(ED)
・性倒錯
・妊娠中絶後症候群
・ジェンダー
・フェミニズム
・セクソロジー
・ホモソーシャル
・性のダブルスタンダード
・家父長制
・生殖革命
・女性の人権
・セクハラ
・リプロダクティブ・ライツ/ヘルス
・性同一性障害
・やおい
・クィア
・ポルノグラフィー
・近代ラブロマンティク
・非 婚
・次世代育成力
・性/愛

16.スポーツ倫理
・スポーツ倫理学
・勝利至上主義
・スポーツマンシップ/フェアプレイ
・ドーピング
・ルール違反
・誤 審
・スポーツとジェンダー
・スポーツとナショナリズム
・スポーツと暴力
・スポーツと体育
・コーチ
・オリンピズム
・プレイとスポーツ
・競争とスポーツ

17.家族倫理
・家族倫理
・家族の起源
・人間性のとりで
・存在としての家族
・地球家族
・親子関係の構築
・家族の個人化
・ネットワーク家族
・親性の危機と親権
・生殖医療技術と親性
・里親・里親制度
・児童虐待
・なぜ少子化?
・子育て支援
・高齢者と家族
・悲 嘆
・離婚と家庭内離婚
・ドメスティック・バイオレンス(DV)
・食卓の変化
・家庭内コミュニケーション
・家族療法
・単親家族
・家族制度の変遷
・フェミニズムと家族
・家族法の変遷
・寄る辺なき人
・外国移住者と家族
・家族権利憲章
・ユダヤ教における家族倫理
・キリスト教的家族倫理
・イスラム教の家族倫理
・仏教の家族倫理
・儒教の家族倫理
・神道の家族倫理
・家父長制家族
・核家族
・夫婦家族
・擬制家族
・家 訓

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