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「物理科学,この1年」特集にあたって

編集長 大槻義彦

本誌『パリティ』は創刊以来33年間,物理科学の全分野をカバーして,やさしくおもしろくためになる記事を満載してきました。素粒子物理,物性物理はもちろん,宇宙天体物理,地球惑星物理,気象物理,応用物理,物理化学,生物物理,医療物理,物理教育……とブツリと名のつくものは何でも取り扱ってきました。
 この30数年,この分野の進歩,発展はめざましく,そのあまりの専門性のために,ごく近い分野ですら,何がどうなっているか皆目見当もつかないという困ったことになってしまった,と嘆く声すら聞かれる始末です。このような現状は決して好ましいことではありません。“他を知っておのれを知る”ということが物理科学分野にこそ必要でしょう。
 そこで本誌恒例の「物理科学,この1年」はこのような要望に応えるべく,創刊以来つづけてきた,物理科学分野でこの1年間にどんな進歩発展が起こったのかを総括する一大特集です。2018年の物理分野の大ニュースはいうまでもなくノーベル物理学賞ですが,残念ながら日本人受賞者は出ませんでした。しかし世界中のマスコミなどの報道で,日本人の受賞を予想しないことはまれでした。したがってわれわれはこぞって夢を膨らませたのでしたがまことに残念な結果でした。この期待は来年以降に持ち込むことにしましょう。
 この特集「物理科学,この1年」は,専門物理学者のみならず,他分野の研究者,技術者,教師,学生の方々の多大な関心を引き,新たなる物理科学の発展と普及に役立つものと確信しています。また,これは,評論家や科学史家,ジャーナリズム,政府・民間の関係機関にも歓迎されるでしょうし,それに何よりも一般の“物理ファン”の方々に大いなる興味をもっていただくことを期待するものです。
 本誌編集委員会,編集室はこの特集のため,万全の態勢で取り組みました。とどこおりなく進行したのは,超特急でまとめる作業をしていただいた各専門家の方々のご協力のたまものです。ご協力いただいた専門家の方々は,次のとおりです。お名前を記しここに深く感謝する次第です。

原子・分子物理,量子エレクトロニクス
 ――洪 鋒雷 横浜国立大学工学研究院
物性物理
 ――小野嘉之 東邦大学名誉教授
流体力学,プラズマ物理
 ――伊藤公孝 中部大学総合工学研究所
   伊藤早苗 九州大学極限プラズマ研究連携センター顧問
素粒子物理
 ――橋本幸士 大阪大学大学院理学研究科
原子核物理
 ――岸本忠史 大阪大学核物理研究センター
宇宙・天体物理
 ――花輪知幸 千葉大学先進科学センター
地球惑星物理
 ――深尾良夫 海洋研究開発機構
生物物理
 ――美宅成樹 名古屋大学名誉教授

原子・分子物理,量子エレクトロニクス / 物性物理 / 流体力学,プラズマ物理 / 素粒子物理 / 原子核物理 / 宇宙・天体物理 / 地球惑星物理 / 生物物理
原子・分子物理,量子エレクトロニクス
●超小型衛星による量子通信の実証実験 竹中秀樹
●超高Q値フォトニック結晶光ナノ共振器 浅野 卓,野田 進
●高性能有機発光デバイスの新展開―OLEDから有機半導体レーザーへ― 安達千波矢
●自由電子レーザーによる位相安定化パルス光の発生 羽島良一

物性物理
●ペロブスカイト太陽電池の進展 宮坂 力
●磁気ゆらぎの強い系でのスピン変換 新見康洋
●量子力学による熱力学第2法則の導出 沙川貴大
●量子ドットからの発光の可逆的制御 蟹江澄志
●新構造量子トンネルFETの開発 高木信一
●振動発電機能をもつクラッド鋼板の開発 成田史生

流体力学,プラズマ物理
●乱流局在―プラズマ乱流研究の最前線 藤澤彰英
●高温プラズマにおける測地線音波の周期倍分岐 井戸 毅
●クロスヘリシティーダイナモ研究の進展 横井喜充

素粒子物理
●SuperKEKBプロジェクト,始動! 後田 裕
●素粒子物理学の将来と暗黒物質探査 松本重貴
●メモリー効果と漸近対称性 杉下宗太郎
●摂動論と厳密解の関係:リサージェンスとリフシェッツシンブル 本多正純
●機械学習と物理 田中章詞

原子核物理
●クォークと反クォークが共存する原子核:K中間子核の世界 岩雅彦,野海博之
●もっとも奇妙なダイバリオン:ストレンジクォーク6個の束縛状態 権業慎也,初田哲男
●重力波観測が示した爆発的元素合成過程:rプロセス 梶野敏貴

宇宙・天体物理
●中性子星合体のマルチメッセンジャー観測 田中雅臣
●高エネルギーニュートリノ天体の初同定 マルチメッセンジャー天文学元年 吉田 滋
●超巨大ブラックホールは銀河進化と無関係? 鳥羽儀樹,小麥真也
●サブミリ波偏波観測でみえた星形成ガスの磁場 古屋 玲

地球惑星物理
●プレートテクトニクス50年のいま 吉田晶樹
●太陽系小天体探査の進展 渡邊誠一郎
●GPSによる電離圏の監視と予測 津川卓也

生物物理
●ゲノム物理学―ゲノムの構造,運動,機能 笹井理生
●〈生命〉という生物の状態と物質の3態 美宅成樹
●生細胞内の1分子動態と相互作用の定量解析 伊藤由馬,徳永万喜洋


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