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今月のキーワード

土壌のインキュベーション研究 / 惑星波(ロスビー波) / データ同化[data assimilation] / ネーターの定理

●土壌のインキュベーション研究[soil incubation study]
温度,湿度,照度が人工的に設定・維持された環境下で,土壌中の研究対象(栄養塩などの成分など)が時間経過とともにどのような変化を示すかを調査すること。フィールド調査により明らかとなった事象の要因を検証するために有効である。たとえば,炭素含有量が異なる土壌を,温度条件が異なる環境下で保管したときの土壌からのCO2,CH4,N2O放出を検証するうえで優れた手法である。(p.4「変動する気候下での炭素循環」)

●惑星波(ロスビー波)[planetary waves(Rossby waves)]
地球は自転しているため,地面に立ってみると,風向に対し,北半球では右に働く力が存在するようにみえる。この見かけの力をコリオリ力とよぶ。中高緯度では,水平スケール約1000 kmを超える温帯低気圧などの大きな現象においては,気圧傾度力とコリオリ力がつり合うように風は吹く(地衡風)。同じ風速に対してもコリオリ力は高緯度ほど強くなることが原因で,地衡風の渦は西に伝播する。東に進む温帯低気圧も上空のジェット気流に乗ってみると西に伝播している。これをロスビー波とよぶ。ロスビーは温帯低気圧も惑星波とよんでいたようだが,現在はロスビー波のうち,とくに大きな波のみを惑星波とよぶことが多い。(p.14「カール=グスタフ・ロスビー,人生を楽しんだ気象学者」)

●データ同化[data assimilation]
気象予測モデルは風や温度の時間変化を記述する運動方程式や熱力学法則に基づいてつくられている。これを時間積分すると気象予測を行うことができる。しかし,コンピューター能力の制約からモデルの解像度には限界があるため,初期値が現実に近くても,積分するうちに,モデルの気象場は外れて行ってしまう。そこで,ある時点で,モデルの場を観測データによって修正し,それを初期値に改めて時間積分を進める方法がとられる。このように観測データを用いてモデルデータを修正する方法をデータ同化とよぶ。現在では3次元的にあるいは時間も含めて4次元的に修正するデータ同化が主流となりつつある。(p.14「カール=グスタフ・ロスビー,人生を楽しんだ気象学者」)

●ネーターの定理[Noether’s theorem]
系の連続的な対称性と保存量を結びつける定理。たとえば,系がある方向に関して一様ならばその方向の運動量が保存し,また,時間に関して一様ならばエネルギーが保存する。注意すべきは,対称性は運動方程式の性質ではなく系を特徴づける作用の性質であり,一方で保存則は運動方程式によって成立する点である。したがってネーターの定理を用いると,系の性質から直接的に,系の時間発展に関する重要な性質を読みとることができる。逆に,系の作用や対称性を見いだすには,保存量に注目するのが有効である。このように,ネーターの定理は基本的かつ重要な役割を担っている。(p.34「ネーター保存量としての熱力学エントロピー」)

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