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今月のキーワード

量子ホール効果 / エッジ状態 / 対称性によって守られるトポロジカル相 / クラマースの定理 / ハルデーン相 / スキルミオン / 量子圧力 / 深層学習 / 第2宇宙速度

●量子ホール効果[quantum Hall effect]
2次元面内に電子を閉じ込め,それに垂直な方向に磁場をかけたときに現れる特異な電気伝導現象。通常の金属では2次元面内のある方向に電圧をかけるとその方向に電気が流れるが,2次元面内に垂直な磁場をかけた場合には,磁場の大きさによっては,その方向には電流は流れず,電圧をかけた方向と磁場をかけた方向の両方に垂直な方向のみに電流が流れる。その電流Iyをかけた電圧Vxで割った値は,ホール伝導率σxyとよばれており,電子の電荷eとプランク定数hを使ってσxy=(e2/h)nのようにe2/hの整数倍となるため(nは整数),量子ホール効果とよばれる。(p.6「トポロジーによる古くて新しい物性物理」)

●エッジ状態[edge state]
量子ホール状態,トポロジカル絶縁体などのいわゆるトポロジカル相は,内部は電気を通さない絶縁体だが,その表面にエッジ状態あるいはトポロジカル表面状態とよばれる独特な金属状態をもつ。これは,トポロジカル相特有の内部の電子の波動関数のトポロジーのねじれの表れである。つまり,トポロジカル相内部のトポロジーのねじれを表面付近で解消しようとして表面に金属状態が現れる。エッジ状態はきわめて安定であり,新奇な量子デバイスへの応用があると期待されている。(p.6「トポロジーによる古くて新しい物性物理」)

●対称性によって守られるトポロジカル相[symmetry protected topological phase, SPT phase]
強磁性相などの通常の相は,対称性の自発的破れや,局所的物理量で与えられる秩序パラメーターによって特徴づけられる。しかし,このような特徴をもたないにもかかわらず,ほかと区別される量子相の存在が認識されるようになり,一般に「トポロジカル相」とよばれる。そのなかでも,ある対称性の存在下でのみ相として区別されるようなものを「対称性によって守られるトポロジカル相」とよぶ。時間反転対称性によって守られるトポロジカル絶縁体や,後述のハルデーン相がその代表例である。(p.26「対称性によって守られるトポロジカル相」)

●クラマースの定理[Kramers theorem]
奇数個の電子からなる(あるいは全スピンが半奇数の)系では,時間反転対称性のもとですべてのエネルギー固有状態が2重に縮退するという定理。このような系では,スピンの(たとえば)z成分も半奇数であるためゼロにはなり得ない。時間反転によってスピンは反転するので,スピンz成分が保存すれば,正負のスピンz成分をもつ,エネルギーが等しい2つの状態が存在することになる。より一般の場合については,時間反転演算子の2乗が(−1)であることから証明される。(p.26「対称性によって守られるトポロジカル相」)

●ハルデーン相[Haldane phase]
ハルデーンは,1981年に整数スピンをもつハイゼンベルク反強磁性スピン鎖は励起ギャップをもつことを予言した。その後の多くの研究によってその予言の正しさが確立したが,それに留まらず,S=1のハイゼンベルク反強磁性スピン鎖の基底状態は,隠れた秩序やエッジ状態など,特異な性質をもつことが明らかになった。そこで,このような性質で特徴づけられる量子相を「ハルデーン相」とよぶようになった。(p.26「対称性によって守られるトポロジカル相」)

●スキルミオン[skyrmion]
物質中には数多くの電子が存在しており,その1つ1つが小さな磁石としての性質(磁気モーメント)をもっている。電子の磁石の向きが1方向にそろった場合,その物質は磁石(強磁性体)としての性質を示す。近年,電子の磁石の向きが渦状に配列している磁気構造が固体中において発見された(本文〈図2a〉参照)。この渦状の磁気構造体を磁気スキルミオンとよぶ。磁気スキルミオンの直径は典型的には10〜100 nm程度である。(p.36「トポロジカル励起で物質を操る」)

●量子圧力[quantum pressure]
ボース-アインシュタイン凝縮体の運動を記述するグロス-ピタエフスキー方程式から流体力学方程式を導くときに現れる,プランク定数を含む圧力項。古典流体力学の方程式には現れない。量子渦の芯などのように,凝縮体密度の空間変化が大きい場所や,凝縮体密度そのものが低い場所で強くなる。(p.42「超流体中で観測される古典乱流の前ぶれ」)

●深層学習[deep learning]
深層学習とはニューラルネットワークを用いた機械学習の一種である。ニューラルネットワークを多層(一般に3層以上)重ねることから「深層」というよび名がついている。とくに,画像や音声,記事で扱った波動関数のように,情報が時空に局在するデータについては,層間の結合を局所的なものにするのが一般的である。これをたたみ込みネットワークといい,とくに画像認識において人間をしのぐ目ざましい成果を挙げている。最近ちまたをにぎわせている深層学習の多くは,多層たたみ込みネットワークである。(p.52「深層学習を利用したトポロジカル物質の研究」)

●第2宇宙速度[second cosmic velocity]
地球から物体を投げ上げると,通常は再び地球に落ちてくるが,約11.2 km/s以上の初速を与えると地球には落ちずに宇宙空間へ飛び去ってしまう。この速度のことを第2宇宙速度あるいは脱出速度(escape velocity)という。逆にいえば,地球から離れた場所にある速度がほぼゼロの物体が地球に衝突するときまでに得る速度でもある。ちなみに,第1宇宙速度は地球を物体が周回する速度,第3宇宙速度は太陽系からの脱出速度で,いずれも大気の影響や摩擦力は考慮されていない。(p.62「講座:新・相対論の正しい間違え方 正しい間違い4 宇宙は現在も膨張しており,銀河もわずかずつ膨張している」)


 
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