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今月のキーワード
極限ブラックホール/ ホログラフィー原理/トポロジカルな弦理論/ エンタングルメント状態/ 残骸円盤/ コロナグラフ
●極限ブラックホール[extremal black hole]
ブラックホールの巨視的性質は,質量,電荷と角運動量のみで決まる。電荷があると,ブラックホールの質量はある正の値より小さくなれない。この最小質量をもつブラックホールのことを,極限ブラックホールとよぶ。電荷も角運動量ももたないブラックホールは,質量が減少するとホーキング温度が上昇し,ついには温度が無限大になって蒸発する。これに対し,極限ブラックホールは絶対温度零度であり,真空のなかでも安定して存在できる。角運動量をもつブラックホールについても,同様に安定な極限ブラックホールを考えることができる。(p.4「量子ブラックホールと創発する時空間」)

●ホログラフィー原理[holographic principle]
光学におけるホログラフィーとは,立体像を干渉縞で記録する方法のことをさす。超弦理論では,この用語を借用して,重力理論と場の量子論が対応するという主張をホログラフィー原理とよんでいる。重力を含まない場の量子論は,超弦理論の現象が時空間の果てに映し出された影のようなものであるという考え方であり,マルダセナ( J. M. Maldacena )が提案したAdS/CFT対応は,そのもっとも明解な例である。(p.4「量子ブラックホールと創発する時空間」)

●トポロジカルな弦理論[topological string theory]
点粒子の運動の軌跡が1 次元の曲線を描くように,弦の運動の軌跡は2 次元の面で表され,数学的には2 次元の面から時空間への写像と考えられる。しかし,このような写像の空間は無限次元であり,弦の量子論の数学的な定式化は完成していない。ただし超弦理論のある種の散乱振幅については,2 次元の面から時空間への正則写像しか寄与せず,写像の空間は有限次元になる。トポロジカルな弦理論とは,このような散乱振幅に限って,超弦理論の計算を数学的に定式化したものである。(p.4「量子ブラックホールと創発する時空間」)

●エンタングルメント状態[entanglement state]
エンタングルメント状態とは,複数の部分により構成される量子系が,それぞれの部分状態に分離して,それらの積では表されない状態をさす。この相関は個々の量子系の距離が離れていたとしても働く非局所的相関であり,たとえば2 つの量子のエンタングルメントにおいては一方を観測することで波束を収縮させると,もう一方の状態が瞬時に他方の観測結果に応じた状態をとるようになる。(p.33「量子科学が描く新しい地図」)

●残骸円盤[debris disk]
星のまわりの円盤内で成長した惑星のもとになる小天体が衝突することによって二次的に形成された,主系列星の周囲の円盤のこと。原始星のまわりで星形成とともに形成された原始惑星系円盤と区別される。残骸円盤の主成分はダスト(塵)で,ガスはほとんどない。1984 年に赤外線衛星IRASによって強い赤外線を放つ主系列星が発見され,コロナグラフを用いて“ がか座ベータ星”の円盤が最初に撮像された。その微細構造は,すでに形成された惑星の重力の影響を受ける。(p.44「太陽系外惑星を撮る」)

●コロナグラフ[coronagraph]
広義には,天体観測において,明るい中心天体からの光を隠し,周囲の暗い天体や構造を調べやすくする工夫全般をさす。皆既日食時以外の太陽コロナの観測や,系外惑星・星周円盤などの観測で用いられる。狭義には,明るい主星を望遠鏡の焦点面に置かれた円形マスクで隠し,さらに,瞳面に置かれた別のマスクでその回折光を抑制する“ リオのコロナグラフ”を意味することが多い。すばる望遠鏡には,専用のコロナグラフ装置が備わっている。(p.44「太陽系外惑星を撮る」)

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