index 2009index 3月号目次 3月号目次

今月のキーワード
量子振動/ ブライト‐ウィグナー共鳴/ フェリ磁性体/ 原子間力顕微鏡/ 超常磁性/ バイオリズム/ コドン/ 褐色矮星/ 質量降着/ 星周円盤/ 不確かさ/ トレーサビリティー
●量子振動[quantum oscillation]
オルソポジトロニウムは,光子と全く同じ量子数( スピン,電荷,荷電共役やパリティ変換性など)をもっているため,量子力学の不確定性が許す時間( 質量が約1MeVなので,約10−21 秒)の範囲内で質量をもった光子に化けることが可能である。このため,何も外から電場磁場など加えない( 真空)状態にもかかわらず,電子陽電子のフェルミオン2 粒子系が,あるときは光に化け,またフェルミオン2粒子系に戻る変化(振動)を絶え間なく繰り返している。(p.4「ポジトロニウムの新たな謎」)

●ブライト‐ウィグナー共鳴[Breit-Wigner resonance]
粒子は固有の質量の状態をもっているが,寿命が有限の粒子は事情が変わってくる。量子力学は,不確定性の許す時間内でエネルギーの“ 嘘をつく”ことを許しているため,寿命が短いと固有質量からずれた状態が許され,固有質量を中心に,寿命の逆数の広がり( 幅)をもった確率分布で粒子が存在する。この分布をブライト‐ウィグナー共鳴曲線といい,不安定粒子特有の現象である。(p.4「ポジトロニウムの新たな謎」)

●フェリ磁性体[ferrimagnet]
強磁性体では隣り合う原子の磁気モーメントが同じ向きに整列して巨視的磁化が発生する。それに対して反強磁性体では,隣り合う磁気モーメントは互いに逆向きに整列するため,磁化が打ち消されて巨視的磁化は生じない。ある種の物質では,互いに逆向きに整列する磁気モーメントが同じ大きさでないことによって,反強磁性的な整列状態で巨視的な磁化が生ずる。このような磁性体をフェリ磁性体とよぶ。マグネタイトを代表とするフェライトはフェリ磁性体の典型である。(p.12「動物の磁気感知能」

●原子間力顕微鏡[atomic force microscope, AFM]
走査プローブ顕微鏡の一種。表面原子と探針先端の原子との距離をナノメートル以下に近づけると,それらの間の力( 原子間力)が検出可能な程度の大きさとなる。それをカンチレバー( 片持ち梁)の変位として高感度測定することによって表面の原子スケールの形状を測定する装置が原子間力顕微鏡である。走査トンネル顕微鏡が導電性表面にしか使えないのに対して絶縁性表面にも適用できるという特徴をもつ。(p.12「動物の磁気感知能」)

●超常磁性[superparamagnetism]
寸法がある程度以下の強磁性体微粒子は単一磁区になり,全体として1 つの大きな磁気モーメントをもつ。微粒子が非常に小さい場合には,それらの大きな磁気モーメントが熱ゆらぎによってさまざまな方向を向く。この場合,系は個々の強磁性微粒子の磁気モーメントを単位とする常磁性体のようなふるまいを示す。このような系が示す磁性を超常磁性という。(p.12「動物の磁気感知能」)

●バイオリズム[biorhythm]
生体系の周期現象は数多く知られている。もっとも有名なものは概日リズム(circadian rhythm)であるが,数十分から数時間のウルトラディアンリズムや,概月リズムなども知られている。これらの起源は完全に解明されているわけではないが,生体リズムを司る多種の時計遺伝子の存在が知られている。(p.12「動物の磁気感知能」)

●コドン[codon]
DNAの配列のうちタンパク質をコードする領域では,連続する3塩基が1つのアミノ酸あるいは翻訳終了を指定する。この3塩基のセットをコドンという。複数種類のコドンが1種類のアミノ酸に対応する例が多い。アミノ酸を換えない塩基置換を同義置換といい,アミノ酸を換える塩基置換を非同義置換という。同義置換は自然選択を受ける可能性が低いため,コドンの同義塩基置換率と非同義塩基置換率の比較からその遺伝子がどのような自然選択を受けてきたかを推定することができる。(p.25「視覚系タンパク質の変化と魚類の進化」)

●褐色矮星[brown dwarf]
惑星と恒星の中間の質量をもつ天体。木星質量の10 数倍から約80 倍の質量をもつ天体が褐色矮星に分類される。恒星と褐色矮星は天体の中心核で水素( 1H)の核融合反応が起こるか否かで区別される。約80 木星質量より軽い天体では中心核が十分な高温に達しないため水素の核融合は起こらない(重水素2Hの核融合は起こる)。一方,惑星と褐色矮星の境界は曖昧である。両者の形成過程の違いや,重水素の核融合が起こるか否か( 約13 木星質量以上で起こる)での区別が提案されているが,定まっていない。(p.32「褐色矮星:恒星になりそこねた星,スーパー木星」)

●質量降着[mass accretion]
恒星は分子雲の密度の高い部分( 分子雲コア)が自分自身の重力で収縮することによって生まれる。収縮が始まるとコアの重力に引かれて周りのガスがどんどんコアに降り積もりコアの質量が増大する。これを質量降着という。質量降着が止むメカニズムの詳細はよく分かっていない。(p.32「褐色矮星:恒星になりそこねた星,スーパー木星」)

●星周円盤[circumstellar disk]
恒星は分子雲の密度の高い部分( 分子雲コア)が自分自身の重力で収縮することによって生まれる。分子雲コアは自然に回転していると考えられるが,収縮につれて回転が速くなり,回転軸と垂直な平面内では遠心力が効いてきてある大きさ以下には収縮できなくなる。一方,回転軸の方向には遠心力が働かないので収縮が続き,中心には恒星が形成される。こうして,恒星とその周りをとり巻く円盤( 星周円盤)が形成される。この円盤は惑星形成の舞台だと考えられているため,原始惑星系円盤とよばれている。(p.32「褐色矮星:恒星になりそこねた星,スーパー木星」)

●不確かさ[uncertainty]
測定の結果に付随した,合理的に測定量に結びつけられうる値のばらつきを特徴づけるパラメーター。“ 誤差”や“ 精度”の代わりに採用された,計測データの信頼性を表すための新しい尺度。1990 年代に入ってから,計量標準の分野を皮切りに利用されるようになった。あらゆる見地からみた測定値のばらつき,あいまいさを数値的に記述したもの。測定の結果の完全な記述には,測定値と不確かさの両方が必要である。本文で“ 精度”という言葉を用いている部分があるが,それは数値に厳密な不確かさ評価がなされていない場合,そのような表現を用いている。その“ 精度”は一般用語として用いており,厳密には定量的な科学用語ではない。(p.50「“ 標準”はいま 量子力学的にオームの法則は成り立つか?」)

●トレーサビリティー[traceability]
不確かさがすべて表記された,切れ目のない比較の連鎖を通じて,通常は国家標準または国際標準である決められた標準に関連づけられ得る測定結果または標準の値の性質。異なる測定による測定値を比較する場合,おのおのの測定値および併記される不確かさは,トレーサビリティーによって整合性が保たれていなくてはならない。測定において,SI トレーサビリティーを保てば,測定結果間の容易な比較が可能である。計量法的には国家計量標準がトレーサビリティーの起点となり,それは国際整合性が保証され,国際的にも容易な比較が可能となっている。(p.50「“ 標準”はいま 量子力学的にオームの法則は成り立つか?」

index 2009index 3月号目次 3月号目次