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今月のキーワード
暗黒物質 / バリオン / 熱い暗黒物質 / 冷たい暗黒物質 / 銀河の回転曲線 / MACHO / WIMP / 重力レンズ / 超対称粒子
●暗黒物質[dark matter]
電磁波では検出できない,質量をもった物質(ダークマターともよばれる)。宇宙全体で見ると,その質量密度はバリオンの5.5倍もある。そのため,銀河の形成や宇宙の大規模な構造形成に重要な役割を果たしてきたと考えられている。まだ,その正体は解明されていないが,宇宙初期の超高エネルギー状態のときに形成された素粒子で電磁気的な相互作用や強い相互作用をしないものが,暗黒物質の候補になりうる。今後の加速器実験による検証が期待されている。(p.6「暗黒物質を探して」)

●バリオン[baryon]
原子核の構成要素である陽子と中性子(核子)と核子より重い重粒子(Λ粒子など)のこと。重粒子ともいう。バリオン以外に知られている粒子にはメソン(中間子)とレプトン(電子など)がある。これら私たちの知っている物質界では,質量でみるとバリオンが支配的なので,物質の質量を議論するときは,一般にバリオンの質量を用いる。ちなみに,バリオンとメソンは合わせてハドロンとよばれる(強い粒子という意味)。(p.6「暗黒物質を探して」)

●熱い暗黒物質[hot dark matter]
暗黒物質のなかでも,その運動エネルギーが大きく,結果として固有運動によって小さな構造を消してしまうものを熱い暗黒物質とよぶ。(軽い)ニュートリノが暗黒物質であれば,このタイプになる。熱い暗黒物質が構造を形成するさいには,小さな構造は,大きな構造が分裂してできるものと考える。しかし,実際には銀河や銀河団といった大きな構造に対応する密度揺らぎまで消してしまい,それらをさらに大きな構造からつくることが困難であることから,現在では,暗黒物質の有力な候補とは考えられていない。(p.15「暗黒物質と宇宙論」)

●冷たい暗黒物質[cold dark matter]
暗黒物質のなかで,その運動エネルギーが小さく,固有運動をほとんどしないものを冷たい暗黒物質とよぶ。候補となるのは,超対称粒子の中で最も軽いもの(lightest supersymmetric particle: LSP)や,アキシオンなどといった,いまだ見つかっていない粒子である。冷たい暗黒物質による構造形成では,小さな構造から順に形成されていく。冷たい暗黒物質が支配的な宇宙で形成される構造と,実際の宇宙の構造がきわめてよく似ていることから,有力視されている。(p.15「暗黒物質と宇宙論」)

●銀河の回転曲線[rotation curves of galaxy]
円盤銀河の回転速度を銀河中心からの距離の関数として表したもの。可視光や電波観測で星やガスの運動速度を測定することで求めることができる。われわれの銀河系と同程度の銀河では,回転速度は場所によらずほぼ一定となり,回転曲線は平坦な形状を示す。銀河の回転曲線からは,遠心力と重力のつり合いの関係を用いることで銀河の質量分布を得ることができ,銀河における暗黒物質分布を調べる上で非常に重要な情報である。(p.22「見えてきた天の川の流れ」)

●MACHO[massive compact halo object]
銀河ハロー中に存在する光を発せず従来の観測では検出できない天体の総称。質量が軽く恒星になりきれなかった星(褐色矮星)や,星の最後の姿である中性子星や白色矮星,ブラックホールなどがその候補である。素粒子的な暗黒物質の候補がWIMP(英語で“弱虫”という意味)とよばれているのに対して,MACHO(“たくましい”という意味)と名付けられた。銀河ハロー暗黒物質の候補として,重力マイクロレンズ効果を用いた探索が行われている。(p.28「重力マイクロレンズ探索の現状」)

●WIMP[weakly interacting massive particle]
物質との間にはたらく相互作用が弱くて質量の大きな素粒子の総称で,暗黒物質の有力候補である。素粒子の超対称性理論の予言するニュートラリーノはWIMPの一種である。歴史的には,さまざまな粒子がWIMPとして考えられたが,現在ではニュートラリーノ以外のものはおおむね否定されている。バリオン的暗黒物質候補のMACHO(massive compact halo object)とは,略語の意味上でも反対語となっている。弱虫(wimp)−強い男(macho)。(p.28「重力マイクロレンズ探索の現状」,p.33「暗黒物質の直接探索」)

●重力レンズ[gravitational lensing]
アインシュタインの一般相対性理論によれば,重力場の影響を受けて光はその進路を曲げられる。遠くの天体の光が途中の星や銀河,銀河団などのそばを通るさい,レンズのように曲げられて観測者に届くことを重力レンズ効果という。銀河や銀河団などによる場合は屈折角が大きく,背景の像がひずんだり複数のイメージに分裂して見えることがある。これに対し,星による場合は屈折角が小さく,単に背景の星の増光のみが観測され,特に重力マイクロレンズ効果(gravitational microlensing)とよばれている。(p.28「重力マイクロレンズ探索の現状」)

●超対称粒子[supersymmetry particle]
超対称性をもつ模型において予言される粒子。超対称性はスピン整数(半整数)の粒子をスピン半整数(整数)の粒子に変換する対称性である。この対称性をもつ模型では,すべての素粒子に対して,電荷が同じで,スピンが1/2異なるパートナー粒子が予言され,標準模型の粒子のパートナー粒子を超対称粒子という。超対称な模型は,一番軽い超対称粒子が暗黒物質候補となること,高いエネルギーで力の統一が実現されると期待されることから,注目されている。LHC実験では陽子の質量の数千倍程度の質量をもつ超対称粒子の探索が可能であると考えられている。(p.38「暗黒物質と素粒子論」)


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