建築設計資料集成

 より掲載
建築設計資料集成小史にみるとおり、日本建築学会における本集成には長い歴史がある。前回の大改訂が完結して、早17年余りが経過した世紀の変わり目に今回の全面改訂の一歩を踏み出したことに偶然と必然の機運を感じざるを得ない。2000年6月に日本建築学会をはじめ建築関連5団体が制定した「地球環境・建築憲章」が提起しているように、地球環境に配慮し、持続可能な循環型社会の実現に向けて、建築や都市の企て方、作り方、使い方、継(ツナ)ぎ方に発想の転換が求められている。大袈裟にいえば近代主義的建築の設計方法の超克という課題に今、直面しているのである。変革はこれからできるであろう新しい建築だけに留まらず、既存のストックの評価、再生の考え方にまで及ぶのは必定であろう。
 このような見方からすれば建築設計資料集成の改訂も構造物の更新に準えられる。設計に必要な資料には、時間的に安定しかつ必要度の高いものもあれば、研究・技術・実践によって生み出された新しい資料も日々蓄積されている。これまでは「設計や技術研究の目覚ましい開発」の成果を盛り込んだ資料の全面的更新、拡充を目指した改訂が行われてきた。そうした膨大な資料を含む大部なものを丸ごと全面改訂するとなると、前回の場合、出版に5年、その前の準備期間に5年の期間を必要とした。そうした過去の改訂経過を再検討し、各巻がテーマ別に等価に編集されている全巻の構成の考え方を見直すことにしたのである。
 肥大化した情報を安定した耐用年数の長い基礎的情報に圧縮した座右に置く一冊の総合編に、圧縮して収めること。その総合編を補完するものとして総合編の頁数の関係から掲載できなかった世界各地に存在し、あるいは存在した、その構築環境の質が高く評価されている事例を収録し、年々開発され、実践されるなかで蓄積される新しい情報に対応して拡張、変更を可能とする各論からなる拡張編を設けること。以上の2点が今回の改訂の骨子である。拡張編には近年、発展の著しい新しい情報メディアを利用した出版形式も採り入れることとし、現在のところ13冊を予定している。しかし、拡張編という名称のとおり、必要の際は随時新しい企画を加えることができる。
 つまり、この二段階構成によって既刊の建築設計資料集成ではともすると最近の情報を盛り込むことに集中し建築に携るものにとって必須の知識となる、過去の情報や事例が脱け落ちるという状況を防ぐことが可能なのである。結局、総合編は基礎的な、発想を促す知識・情報を提供する座右事典、拡張編は利用目的に応じて専門的・実践的情報を提供する設計ハンドブックという性格をもたせるように意図したのである。
 なお、1986年から刊行を開始した、建築の初学者、建築専門外の人達の利用しやすい「コンパクト版」は必要に応じて刊行、改訂を継続していくことを付記したい。
 このように意図した本書が多くの方々に利用され、建築環境の質の向上のために役立ち、刺激剤として働くならば、これに参加した関係者一同にとって望外の幸せである。企画、編集、執筆、製作などの改訂作業に多大の努力を傾注していただいた大勢の方々に感謝の意を捧げる次第である。  
2001年5月
  日本建築学会建築設計資料集成委員会
 委員長 高橋鷹志

建築設計資料集成小史
日本建築学会が建築設計資料集成委員会を設置し、建築設計実務者の要望に即応する図を主体とした資料集の編纂を開始したのは1937年に遡る。その成果は当初、会誌『建築雑誌』の各号に掲載され、それらに加筆し全3集に集大成されたものがシリーズ刊行物として1942年より上梓され、戦後の復興期まで重用された。
 1960年代から、この1〜3集の改版と内容を一新した新版の刊行が始まり、それらは1972年全6集で完結した。1973年装いを新たにした委員会のもと最初の大改訂が企画され、建築設計資料集成の構成の基本的見直しが検討された。この委員会の活動成果の刊行は1978年の「環境」から開始され、1983年「索引」の発行により全11集として完結した。さらに加えて、コンパクト建築設計資料集成(1986年、1994年)、コンパクト建築設計資料集成<住居>(1991年)が幅広い利用や読者のニーズに応えるべく出版された。1994年、同委員会は第1集の刊行後15年以上経過した情報を更新すべく再度の大改訂準備を開始したが、改訂に対する建築学会全体の合意が得られず、1996年作業を中断し委員会も解散した。
 今回の第2次大改訂は新組織により1996年10月21日の第1回本委員会から始められた。全体構成から装丁に至るまで、従来のものとは直接的な関係をもたないまったくの新建築設計資料集成である。

2001年5月

(日本建築学会建築設計資料集成委員会・企画調整小委員会)

◆全面改訂の概要と構成はこちら

   総 合 編   
A4判・688頁・上製、函入、事例データ検索用CD-ROM付(Win/Mac)
本体価格23,000円(税別)
ISBN 978-4-621-04828-3 

新しい「建築設計資料集成」の第1回配本として、本シリーズの中核にある座右の書ともいうべき『総合編』を刊行。以降順次刊行される『拡張編』13巻へのガイダンスともなる必携の巻。
 

   拡 張 編   
具体的な建築物を図面を中心に紹介した事例ページとそれに関係する各種データ、環境・構造・構法等に関する話題を示すトピックスによって構成される。 対象とされる事例は、日本および海外の歴史的定番事例、新しい事例、著名な作品としては紹介され難い大衆的な建築物も含まれる。総合編の事例から5,6倍の事例数を収録。

拡張編各巻タイトル(各巻A4判・120〜300ページ)

環境
A4判・232頁 本体価格12,000円 ISBN 978-4-621-07835-8
人間

A4判・164頁 本体価格9,400円 ISBN 978-4-621-07146-5

物品
A4判・294頁 本体価格11,000円 ISBN 978-4-621-07172-4 
居住
A4判・180頁 本体価格12,000円 ISBN 978-4-621-04914-3 
福祉・医療
A4判・188頁 本体価格12,000円 ISBN 978-4-621-07090-1 
集会・市民サービス
A4判・192頁 本体価格12,000円 ISBN 978-4-621-07089-5 
教育・図書
A4判・196頁 本体価格12,000円 ISBN 978-4-621-07173-1 
展示・芸能
A4判・174頁 本体価格12,000円 ISBN 978-4-621-07276-9 
余暇・宿泊
A4判・170頁 本体価格12,000円 ISBN 978-4-621-04942-6 
業務・商業
A4判・142頁 本体価格12,000円 ISBN 978-4-621-07410-7 
生産・交通
A4判・162頁 本体価格12,000円 ISBN 978-4-621-07461-9
地域・都市 I
A4判・232頁 本体価格12,000円 ISBN 978-4-621-07275-2
地域・都市 II
A4判・208頁 本体価格12,000円 ISBN 978-4-621-07409-1 

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