人工環境デザインハンドブック

編集代表 栃原 裕(九州大学大学院芸術工学研究院 教授)
発行:丸善株式会社

本体価格30,000円 B5判 520頁 ISBN978-4-621-07921-8


第一線研究者の研究成果に基づき、人工環境の各種環境因子、複合環境および実環境について「生理的評価」、「心理的評価」、「デザイン展開」および「基準値・標準値」を記載し、幼児、高齢者、障がい者にも配慮した人工環境のデザイン指針を提示。人工環境に係わる研究者・技術者さらには人工環境を設計する現場デザイナ−の方々にとって最適の書。

刊行にあたり
 人類は過酷な自然環境を科学技術の力で克服し、徐々に生存範囲を拡大し、さらにはより快適な環境をつくり出すまでになっている。この高度に発達した科学技術によりつくり出された人工環境は、生活環境の各種要因、例えば光環境、映像環境、音環境、温熱環境等を自在に操り、人々が快適に生活する場を提供してきた。しかし、技術によりつくり出された人工環境は、往々にして利便性や経済性の追及に主眼がおかれ、人間本来の生理的・心理的感覚特性を踏まえたデザインがなされず、例えば、夜間の高照度人工照明が人間の生体リズムを乱し、映像、音響の乱用が神経障害、聴取妨害等を引き起こしたりする等、様々な負の効果をもたらしていることも否定できない。
 諸技術を人間にとって真に望ましいものとすること、すなわち「技術の人間化」を目的として昭和43年に設立された九州芸術工科大学(現:九州大学芸術工学研究院)は、開学以来、この研究教育理念を踏まえて環境生理学、知覚心理学に関する基礎研究の実績を上げるとともに、その成果を人工環境のデザインに結びつけるような実践的研究においても多くの成果をあげて来た。さらに、平成15年度には、文部科学省の21世紀COEプログラムにおいて、「感覚特性に基づく人工環境デザイン研究拠点」が採択された。本拠点は、「技術の人間化」の理念に基づき、人間の生理的・心理的感覚特性に基づいて真に人間のためとなる人工環境をデザインするための研究教育の拠点形成を目指すものである。「環境生理学」、「知覚心理学」、「感性デザイン」の三つの部門が連携して、視覚、聴覚、嗅覚、温熱感覚および体性感覚の知覚心理学や、これらの環境にかかわる環境生理学の最新知見に基づき、照明、映像、音響、空調、建築物等の人工環境の設計条件を明らかにして来た。そこでは、単一要因だけでなく、複合環境の総合的評価を行ない、最先端の設計技術を駆使し、照明、映像、音響、空調、建築物等に関する、具体的な人工環境整備のデザイン指針提案を行うことを目的とした。
 このハンドブックは、本COEプログラムの事業推進担当者だけではなく、九州大学さらには学外の研究者にも執筆をお願いした。第一線研究者の研究成果に基づき、人工環境の各種環境因子、複合環境および実環境について「生理的評価」、「心理的評価」、「デザイン展開」および「基準値・標準値」を記載し、幼児、高齢者、障がい者にも配慮した人工環境のデザイン指針を提示したものである。人工環境に係わる研究者・技術者さらには人工環境を設計する現場デザイナ−の方々にお役に立てば幸いである。
 2007年10月
人工環境デザインハンドブック編集委員会 編集代表 栃原 裕

人工環境デザインハンドブック編集委員会
編集代表
栃原  裕
 九州大学大学院芸術工学研究院 教授
編集委員
石田 壽一
 九州大学大学院芸術工学研究院 教授
伊藤 裕之 九州大学大学院芸術工学研究院 准教授
岩宮眞一郎 九州大学大学院芸術工学研究院 教授
大井 尚行 九州大学大学院芸術工学研究院 准教授
大中 忠勝 福岡女子大学人間環境学部 教授
尾本  章 九州大学大学院芸術工学研究院 准教授
飛松 省三 九州大学大学院医学研究院 教授
村木 里志 九州大学大学院芸術工学研究院 准教授
安河内 朗 九州大学大学院芸術工学研究院 教授
山下由己男 九州大学大学院芸術工学研究院 教授
(平成19年12月現在,五十音順)

目  次
1 人工環境の創造
人類の歴史:猿人の時代/原人の時代/旧人の時代/新人の時代
人工環境の歴史:暖冷房の歴史/照明の歴史/人類と人工環境の歴史
人工環境デザイン研究:人工環境デザイン研究拠点/人工環境デザイン研究の実験施設
2 温熱環境
概要:暑さ寒さと人間/温熱環境因子
生理的評価:体温調節のしくみ/暑熱・寒冷時/湿度
心理的評価:温覚・冷覚/温冷感と快適感
デザイン展開:冷房時の問題点/暖房時の問題点/高齢者への留意事項/高齢者施設の空調
基準値・標準値:温熱指標/温熱環境の基準値
3 空気環境
室内空気汚染と健康影響
空気中の常在成分と健康影響:酸素/二酸化炭素
空気中の異常成分と健康影響:燃焼に伴って生じるガス/ホルムアルデヒド/浮遊粒子状物質(浮遊粉塵)/真菌
臭気:快・不快情動/嗅覚刺激による快・不快情動
デザイン展開:空気汚染低減法/積極的な空気改善策の取り入れ/住まい方
基準値・標準値
4 音環境
概要――音に関する基礎知識:音の正体/音は縦波/純音/複合音/ノイズ/インパルス/波長/球面波,平面波/定在波/ドップラー効果/うなり
生理的評価:聴覚のしくみ/音に対する生理反応/難聴/高齢者の聴覚/補聴器
心理的評価:聴覚の特性/音の感性的側面/音の方向性/音の空間性/音声の知覚/音楽知覚/聴覚情景分析/サウンドスケープ
デザイン展開:屋外空間での騒音制御/騒音の能動制御/室内空間の音響設計/音場制御/サイン音のデザイン/機械音のデザインと音質評価/サウンドスケープ・デザイン
基準値・標準値:環境基準/建築基準/報知音,警報音関係/音質評価指標
5 光環境
概要:光環境と視覚/視覚の特徴/光環境の非視覚的影響/自然光とその利用/人工光とその利用
生理評価:生理評価の考え方と方法/生理評価のための測定方法と解釈/生体リズムとホルモン/睡眠と照明/労働と照明
心理評価:心理評価の考え方と方法/視認性の評価/室内光環境の質に関する評価/住宅居間の照明雰囲気評価
デザイン展開:視環境の快適性の3要素,よい照明とは/感覚特性に基づくデザインのプロセス/光の非視覚的作用と照明デザイン
基準値・標準値:光環境に関する基準/住宅照明設計技術指針/オフィス照明基準/サーカディアンリズム維持のための照明基準策定と課題
6 色彩環境
概要:視環境での色彩/色彩知覚の3要素(光源・物体・視覚)/色彩制御の目的と方法 
生理的評価:眼球光学系/色覚神経過程
心理的評価:色覚の時空間特性/色覚特性の測定方法/色覚の多様性/高齢者の色覚
デザイン展開:色彩と視環境
基準値・標準値:安全色彩(安全のための色彩制御)/アクセシブルデザインのための色の組み合わせ方法
7 映像環境
概要:映像環境の概念/映像環境の現状/問題点
生理・心理的評価:VDT障害と眼精疲労/自律神経系への影響/光感受性発作/映像酔い/眼球運動/奥行知覚/視覚的効果
デザイン展開:眼精疲労を避けるディスプレイ/映像の表現効果/公共空間の映像/映像とインターフェース/視覚的効果とデザイン/バーチャルリアリティ
基準値・標準値:光感受性発作を起こさないための指針/映像酔い・立体視覚疲労を防ぐために/高齢者,色覚異常者,子どもへの配慮
8 実環境
概要:人間特性と実環境/複合環境
感覚特性を配慮した実環境のデザイン手法:空間に関する感覚・知覚/インテリアに関する美の基準案/進化的計算技術による人間要素が絡む環境の設計手法/生活空間とエレメントのデザイン(機能と感性)評価方法研究
感覚特性を配慮した実環境のデザイン事例:生活空間とエレメント/オフィス空間/療養環境デザイン/次世代型個室療養空間のデザイン/水回り(浴室・便所)/航空機内環境
高齢者・障がい者に配慮した実環境のデザイン事例:高齢者に対する配慮/子どもに対する配慮/視覚障がい者に対する配慮/聴覚障がい者に対する配慮/動作不自由者に対する配慮


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