原素の百科事典
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表紙 ★発見された115元素の発見の経緯をまとめ、用途別に列記。
★生物体、特にヒトに対しての重要性を詳細にまとめて“どんな食品に含まれているか”とか“人体への影響や必須元素か否か”なども列記。
★環境におけるいろいろなデータや経済・産業上重要な生産高や鉱石資源、利用可能な資源の量なども含めて記載。
★それぞれの元素についての重要な物性データ(融点、沸点、密度など)の表も添掲載。
◎本書では元素を五十音順に並べていますが、どこの頁からでも読むことができます。


周期表 私たちが住むこの世界は、限られた数の元素から成り立っています。現在発見されている元素の数は115。この元素の知識は、科学になじみのない方でも大変興味深く、面白いことが数多くあり驚かされます。
 では、この元素は、どのように発見され、どのように利用されてきたのか、また命名する際にどんなユニークな経緯をたどったものか、歴史的な背景やエピソードなどから紐を解くと実に多くのさまざまなドラマがありました。例えて云えば“ウラン”。プルトニウムの発見によって、20世紀における大量無差別爆弾の発明/原子爆弾は有名ですが、一方核燃料として電力エネルギーに利用され、同時に環境ヘの影響が国際的な話題にもなっていることも事実です。また“ウラン”は医療ヘの応用など人類のために広範利用されていることがわかります。こうして考えると“元素”は、地球環境における大気データ(オゾン)や体内の血液の粘度を一定に保つ(カリウム)、健康維持の摂取食品(カルシウム)、経済・産業上でも重要な鉱石資源(白金/プラチナ)など、社会にさまざまな形で身近に存在し、私たち人類がその恩恵、被害など多大な影響を受けていることが実感できるかと思います。そして、この地球の未来の鍵を握っているともいえるのが“元素”なのです。

原著者紹介 ★John Emsley(ジョン・エムズリー)
1965〜1990年、ロンドン大学で化学の教鞭をとり、学術論文  篇以上を発表。現在はケンブリッジ大学化学科の専属サイエンスライター。日常生活で出遭うさまざまな化学物質を紹介した『インディペンデント』誌の科学コラム「今月の分子」(1990〜1996年)は好評を博す。科学普及活動に対してグラクソ賞(1993年)と英国化学工業協会会長賞(1994年)を受賞。“The Consumer’s Good Chemical Guide(邦訳『逆説・化学物質』)”は1995年のローヌ・プーラン科学書賞に輝いた。その続編、“Molecules at an Exhibition(邦訳『化学物質ウラの裏』)”は1998年に刊行され、『ニュー・サイエンティスト』誌の書評では“非常に読みやすく、おもしろい。科学に興味をもつ人だけでなく、化学は退屈で難解だと思う人にとくにお勧めしたい。”と紹介されている。

A.各元素の名称:由来/B.宇宙における各元素:恒星内における元素の生成、存在度/C.人体中の各元素:平均的な人間の身体に含まれる量、分布/D.食品中の各元素/E.医療における各元素:過剰摂取、あるいは欠乏による作用/F.各元素の歴史:発見者。いつ、どこで、どのようにして発見したか/G.戦争と各元素:武器、爆発物、防護、軍需必要品など/H.経済・産業界における各元素:年産量、生産地、用途/I.環境中の各元素/J.各元素の化学的性質:化学的性質、反応、自然に存在する同位体/K.意外なエピソード:奇妙な用途、あるいは予想外の特徴 *以下は一部掲載例として抜粋

■A.銀の名称
この元素名はアングロサクソン語の「銀」を意味する siolfur に由来している。化学記号はラテン語の argentum に由来する。元素名には発見された場所の国名(アメリシウムなど)や、発見者の母国名(ポロニウム)、さらには大河の名前(レニウム)などがつけられた例がある。ところが銀の場合には逆のケースが起きたのである。これから国名(アルゼンチン、Argentina)が生まれ、また大河の名(ラプラタ河、Rio de La Plata)もつけられた。これはスペイン語で「銀の川」という意味である。これは十六世紀から十七世紀にかけて、スペイン人がこの川の流域の原住民から大量の銀を略奪したことを物語っている。十九世紀になってこの地域の住民がスペインの支配下から独立しようとしたとき、独立国名を「ラ・プラタ」ではなくラテン語の「Argentina」(スペイン読みではアルヘンチーナになる)として、植民地時代の伝統とつながりがあることと、鉱産物が豊かであることを意味させたのである。
■I.環境中の炭素
炭素は環境の面から考えても最も重要な元素であろう。地球が生成した当時の大気は、著しい量の二酸化炭素とメタンを含むものであったと考えられている。ただ、ひとたび生命体が生まれたことで、著しい変化が起きた。今日ではどちらの気体も少なくなって、その代わりに酸素が含まれるようになっている。これらは緑色植物が二酸化炭素と水を原料として、光合成により炭水化物と酸素を生成してくれたおかげである。地球大気では、化石燃料の燃焼の結果として二酸化炭素と一酸化炭素の濃度が間断なく増加しつつある。同じように水田、畜牛などからメタンも供給される。現在のところではこれらの人類のもたらす影響はまだ比較的小さく、二酸化炭素の供給源としては微生物や動植物、メタンの供給源は沼沢地や蟻塚などの寄与の方がずっと大規模である。
■J.化学的性質―リン

データファイル/元素記号P/原子番号15/原子量30.9737/融点44℃(白リン)
沸点280℃(白リン)/密度1.8/L(1.8g/竅法頁鬟螢鵝法2.2/L(2.2g/竅
(赤リン)/2.7/L(2.7g/竅法聞リン)/酸化物P4O6,P4O10

リンは非金属元素で周期表では第15族に属する。いくつもの同素体が知られているが、中でも白リン、赤リン、黒リンなどが(実際の色は名称と多少ずれてはいるけれども)有名である。白リンは工業的に生産される形で、暗所におくと発光し、空気中に曝すと自然に燃え、かつ猛毒でもある。―以後省略
■K.意外なエピソード―硫黄
1.通常の場合、好ましくない悪臭をもつ化合物のほとんどは硫黄を含んでいる。たとえばスカンクの悪臭は、三種類の硫黄を含む化合物が源である。すなわち2-ブテンチオール、イソペンタンチオール、2-ブテニルメチルジスルフィドである。このどの一つをとっても恐ろしい悪臭物質である。
2.ショクダイコンニャク(Amorphophallus titanium)はインドネシア特産の植物で、四年に一度巨大な花を咲かせる。この花の形は学名からも判るように巨大な陽物状であるが、人間にとっては実に近寄り難い悪臭を放つ。だが、ある種のハチにとってはどうにも抵抗できない魅力があるらしく、開花するとものすごい数が集まってくる。このハチによって受粉が行われるのである。この悪臭物質はジメチルジスルフィドとジメチルトリスルフィドである。よく「腐った魚の臭い」などと形容されている。地元インドネシアの人たちには「死骸植物」の名で知られている。