数理科学とその可能性を誰もが実感できる!
第2版 現代数理科学事典

編集代表 広中 平祐(数理科学振興会、ハーバード大学名誉教授)
発行:丸善株式会社
B5判・1450頁 本体価格44,000円 ISBN978-4-621-08125-9

コンピュータの普及とともにあらゆる分野に役割を拡大している"数理科学"の諸相を妥協や近道をせず、最先端の研究者が直接、一般向けにわかりやすくまとめています。
200名を越える第一線の研究者による力作です。
1つひとつの内容が多くの貴重な知恵と経験、その文章化における努力の結晶を読み取ることができるでしょう。
内容の正確さと本質を射抜く解説を実感できるだけでなく、今後の発展の方向性も暗示しています。
数理科学は数学学科出身者だけのものではなく、科学あるいは社会全体の貴重な礎となり、その全容をまとめ、この分野における一大成書です。

《 序 文 》

  数理科学の実態と可能性を誰もが実感できるものをまとめたい。それが本書の編纂趣旨である。本書は「数理科学とはいったい何であるか」、「数理科学の可能性とは何か」に関心をもつあらゆる人々のさまざまの疑問に回答を与えてくれると思う。
 コンピュータの進歩普及とともにあらゆる分野に役割を拡大している"数理科学"の諸相を、妥協や近道をせず、各分野の最先端の研究者に最新最高の内容を一般向けにわかりやすく書いていただき、なおかつ全体の原稿の内容調整に惜しみなく時間を費やした。200名を超える多用をきわめる第一線の研究者による力作である。一つひとつの内容が貴重な知恵と経験と努力の結晶である。読んでいただければ内容の正確さと本質を射抜く解説を実感し、今後の発展の方向性も感じ取っていただけると期待している。事典の存在意義にこだわり、多数の第一級の専門家にお願いして直接に自ら執筆と編集を手がけていただいた。めくって読み、めくり返して読んでいただければ広い視野と深い味わいを体得していただける事典にできたと思う。
 本書は1991年3月に大阪書籍より刊行された「現代 数理科学事典」の改訂第2版である。この改訂版においては発行元が大阪書籍から丸善に代わった。その丸善から本書の改訂の話が私にあったのは2002年11月のことであるから、その時点から7年の歳月が経過している。執筆と編纂にかかわった多くの専門家の長大な時間と真摯な協力をほしいままにいただいたともいえる。とはいえ、絶え間なく拡大と深化を続ける"数理科学"を事典としてまとめるということは、それだけ壮大な試みであったともいえる。あるとき編集者の一人が甘利俊一氏に「通常の本なら原稿を整理・読み進めていくうちにある最適点への収束が徐々に見えてくるが、本書はますます複雑化してしまう」というと甘利氏は「それこそが"数理科学"なのだ」と答えたと聞いている。それは数理科学の本質から発生する特質であるといえるのではないだろうか。純粋数学がともすれば美しい宮殿のなかに自閉するのに対比して数理科学は本来からして実社会に向って発展的である。
 科学全般において、数学の言葉で表現し、数学に手がかりを求めることも以前に増して多くなったのも事実である。さらには純粋数学的な理論にまで発展させたいと努力する工学者も尊敬に値する。しかし数理科学は純粋数学から自然発生する学問ではなく、あくまで目前の実社会に直結する様々な難題に真っ向から挑戦する学問であり、だからこそ発想が多発的であり未来の可能性が広大であるといえる。
 本書は現在のわが国の数理科学を代表する先生方のご尽力によって完成できたものである。編纂・執筆をいただいた先生方の全員に心から御礼を申し上げたい。おかげで類をみない優れた内容の事典ができ上がり、数理科学のますますの発展のために貴重な礎が誕生したことは幸甚と思う。
2009年8月  広中 平祐

編集委員会構成 (五十音順・所属は、2009年8月現在)

代  表
広中 平祐 数理科学振興会

企画委員
甘利 俊一 理化学研究所
楠岡 成雄 東京大学
和達 三樹 東京理科大学
伊理 正夫 東京大学名誉教授
一松  信 京都大学名誉教授
巌佐  庸 九州大学
室田 一雄 東京大学

編集幹事
麻生 英樹 産業技術総合研究所
竹村 彰通 東京大学
三井 斌友 同志社大学
今井 秀樹 中央大学
徳山  豪 東北大学
渡辺  治 東京工業大学
木村 英紀 理化学研究所
伏見 正則 南山大学

編集委員
井坂 元彦 関西学院大学
小林 欣吾 情報通信研究機構
松尾  泰 東京大学
国友 直人 東京大学
四方 順司 横浜国立大学
丸山  徹 慶應義塾大学
國場 敦夫 東京大学
萩原  学 産業技術総合研究所
山口 和彦 電気通信大学


執筆者一覧 (五十音順・所属は、2009年8月現在)


目次構成

I 物理の数理
●1基礎 力学/電磁気学/量子力学/連続体力学/熱・統計力学/相対論/経路積分/群論/微分形式
展開(1) カオス/ソリトン/可解模型/共形場理論/非平衡統計力学/ランダム行列/スピングラス/量子情報/相転移と臨界現象の数理/乱流/連続群
展開(2) 場の量子/場の理論における非摂動的方法/ゲージ理論/超対称性/超弦理論/量子重力/位相的場の理論/宇宙論

II 生命の数理
数理生態学 個体群動態/空間生態学/多種共存の生態学/生物の動態と経済学/保全生物学と絶滅確率
行動と社会の数理 行動学と社会生物学人口学
進化生物学 遺伝子から進化をみる/連続形質の進化/共進化/進化工学と実験進化学
●発生と形態形成の数理 セルオートマトン:細胞再配列/チューリング:反応拡散方程式/Lシステム/形態形成のシミュレーター
神経脳科学 神経科学の数理モデル/細胞集団の同期/集団符号化/脳のモデル
医学の数理 免疫の数理モデル/感染症流行の数理/宿主と病原体の共進化/発がんの数理
生命情報学 バイオインフォマティックスと数理/配列情報の解析/立体構造情報の解析/大規模実験支援のための数理技術
システム生物学 遺伝子・タンパク質のダイナミックス/概日リズム/ゆらぎ/ネットワーク/ブーリアンネットワーク

III 計算機科学
計算と論理 論理の基本/計算の基本/計算の意味
計算と言語 形式言語/言語の解析/データを表現するための言語
アルゴリズムと計算の複雑さ アルゴリズムの設計と解析/アルゴリズム設計技法/計算の複雑さの解析/計算モデルとアルゴリズム設計
計算のさまざまな実現法 並列計算/分散計算/量子計算

IV 経済の数理
経済学の数理 経済主体の最適化行動/一般均衡理論/経済均衡の逐次解法/不確実性下の経済行動/動学的最適化/経済動学/経済政策の基礎/ゲーム理論と経済学/数理ファイナンス
計量経済学の数理 計量経済学と構造方程式モデルの展開/時系列マクロ計量経済学/時系列モデルの展開/離散選択モデルとミクロ計量経済学/ミクロ計量経済学とパネルデータ分析/セミパラメトリック計量経済学

V 数理統計学
統計的推測 推定/検定/推測の漸近理論/ノンパラメトリック法/統計的決定理論
統計的モデルの特定化と解析 統計的モデル/線形モデルの推測/一般化線形モデル/ベイズ統計法/モデル選択/寿命データの解析/欠測値の解析
実験計画法と標本調査 実験計画法/標本調査法
多変量解析 多変量データの記述法/多変量分布論/多変量モデルの推測/離散多変量解析/グラフィカルモデル
時系列と確率過程の解析 時系列解析/非線形時系列モデル/確率過程の解析
統計計算 確率分布の近似/モンテカルロ法/マルコフ連鎖モンテカルロ法/ブートストラップ法

VI OR
数理計画法 沿革/定義/狭義の数理計画法/広義の数理計画法/各種の数理計画問題の間の関係
線形計画 はじめに/線形計画問題/凸2次計画法/半正定値計画法/2次錐計画法/対称錐計画法
非線形計画 非線形計画の概観/最適性条件/双対性理論/制約なし最適化/制約つき最適化/大域的最適化/相補性問題
組合せ最適化 組合せ最適化とその解法/近似解法/整数計画法/ネットワーク理論/PERT・CPM分析/スケジューリング理論
待ち行列 待ち行列モデル/M/M型待ち行列モデル/その他の待ち行列モデル/待ち行列ネットワーク/ふくそう(輻輳)理論
信頼性と保全性 信頼性の評価尺度/保全性の評価尺度/予防保全モデル
シミュレーション 概観/離散事象シミュレーション/シミュレーション結果の解析/分散減少法/最適化問題/準モンテカルロ法
経営・経済性工学 経済計算/在庫管理/DEA(包絡分析法)/AHP(階層化意思決定法)
都市・公共システム 地理的最適化問題/交通量配分問題/地域間相互作用モデル/選挙制度

VII 制御理論
動的システムとその制御 制御理論概説/動的システムの表現と応答/線形システムの構造/線形システムの性質/フィードバック制御
安定性の解析 リャプノフ安定性/入出力安定性/フィードバック系の安定性/安定判別条件
最適制御の方法 最大原理にもとづく最適制御/動的計画法にもとづく最適制御/最短時間制御とバン‐バン制御/最適レギュレータ
モデリングとシステム同定 はじめに/信号とシステム/ノンパラメトリック同定法/パラメトリック同定法/部分空間同定法
フィルタリングと状態推定 ウィーナーフィルタとカルマンフィルタ/非線形フィルタと拡張カルマンフィルタ/推定と制御の分離
ロバスト制御 ロバスト性とは/既約分解表現/内部安定性/グラフ位相/内部モデル制御/安定化補償器のパラメトリゼーション/トラッキング制御/不確かさのクラス/ロバスト制御問題/H∞制御/数値最適化による解法/ロバスト推定
非線形制御 非線形システムの線形化/非線形H制御/非ホロノミックシステムの制御
適応制御 適応制御の基礎/モデル規範形適応制御/セルフチューニングコントローラ/ロボットマニピュレータの適応制御

VIII 情報の理論
情報と符号化の理論 情報理論の課題・概説/情報理論的諸概念/情報源符号化/通信路符号化/連続情報源・通信路/多元情報源/多元通信路/情報スペクトル/量子情報理論/情報幾何学
誤り訂正符号の数理 符号理論の基礎概念/線形符号/符号の限界式/巡回符号/BCH符号とRS符号/代数幾何符号/多数決論理/復号可能な符号/たたみ込み符号/連接符号/ターボ符号・LDPC符号と反復復号法/多値変調に対する符号化
暗号理論の数理 概要/共通鍵暗号/公開鍵暗号/デジタル署名方式/ゼロ知識証明/相手認証/情報理論にもとづく暗号理論/ハッシュ関数/鍵共有方式/応用暗号プロトコル/情報ハイディング/量子鍵配送/耐タンパー技術

IX 数値計算
行列と線形計算 特殊な形の行列/連立1次方程式の解法/固有値問題の解法/直交行列による基本変換
非線形方程式の解法 非線形方程式の反復解法/縮小写像の原理/反復公式の導出/代数方程式/非線形最小2乗法
関数と積分の近似 関数の近似/積分の近似
常微分方程式の解法 離散変数法/離散変数法の安定性/離散変数法の応用
偏微分方程式の解法 偏微分方程式の数値解法の概要/選点法およびガレルキン法/差分法/有限要素法/境界要素法/その他の解法/構造保存的解法
精度保証の手法 数値計算の品質保証/精度保証つき計算法
ウェーブレット解析 ウェーブレット/連続ウェーブレット変換/離散ウェーブレット変換

X 認知と学習
認知過程の数理 視覚認知過程の数理/聴覚認知過程の数理/リカレントニューラルネットによる決定論力学系にもとづく高次認知モデル
パターン情報の数理 視覚情報の数理/聴覚情報の数理/パターン情報の展開/パターン認識の数理
学習過程の数理 学習過程のモデル/認知発達のモデル/統計的学習理論/情報論的学習理論/特異モデルの学習理論/情報統計力学
学習モデル ニューラルネットワーク/サポートベクトルマシン/ベイジアンネットワーク

XI 数理の基礎
代数的構造 集合/基本代数系/線形空間/凸集合の性質/整数の性質
組合せ理論 場合の数/母関数/組合せ的デザイン
グラフ理論 グラフの定義と基礎概念/道と閉路,連結性/木/連結度/マッチングと因子/平面的グラフ/彩色/ネットワークフロー/ランダムグラフ/グラフマイナー
計算機代数 概説/計算機代数システム/多項式の最大公約子/グレブナー基底とその応用/多項式の因数分解/近似代数/初等関数の不定積分
計算幾何学 計算幾何学とは/2次元の代表的手法──平面走査法/凸包と半平面の共通部分/美術館ガードと多角形分割/ヴォロノイ図とドゥローネー図/双対変換とアレンジメント/幾何的探索問題
トポロジー 概説/ホモロジー論/ホモトピー/微分可能多様体/リー代数とリー群/ファイバー束/接続/リーマン多様体
解析学の基礎 極限/微分積分法の基礎概念/最大最小問題/微分方程式/測度論の基礎/フーリエ解析
確率論 確率論の基礎/確率過程/確率解析
非線形の数理 分岐理論/特異摂動論/非線形楕円型偏微分方程式



組見本




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